第五章:鍛錬の日々、成長の刻
リオンは12歳になった。弟は5歳になり、妹は3歳になった。彼らの賑やかな声が、家の中を常に活気づけている。朝、まだ夜明け前の静けさの中、リオンは父に起こされた。
「リオン、起きろ。剣術には、まず体力だ。技術は、その土台の上に築かれる」
父の言葉は、いつだって実直だ。リオンは、言われた通り、早朝から基礎体力向上のための運動に励んだ。村の周りを駆け巡り、腕立て伏せ、腹筋、そして父が課す様々な負荷トレーニング。全身の筋肉が悲鳴を上げるが、リオンは歯を食いしばって耐えた。体力こそが、将来、風を掴むため、そして母の光を支えるための土台となるのだと、父は繰り返し説いた。
昼食を済ませると、リオンは弟と妹の世話に時間を費やした。二人が飽きないように遊び相手になり、時には怪我をしないように見守る。賑やかで、時に大変な時間だったが、弟妹の屈託のない笑顔は、リオンの心を和ませた。
夕食後、家族が団欒を終えると、リオンは再び自身の修行へと向かった。夜の静寂の中、母から教わった魔力の訓練。指先から溢れ出す温かな光。一年間、地道に続けた訓練の甲斐あって、今では、カップの水すべてを澄ませることができるようになっていた。母は、その進歩を喜び、リオンの頭を撫でてくれた。
「よくやったわ、リオン。これで、あなたの力は、より確かなものになったわ」
母はそう言って、リオンに新しい課題を与えた。今度は、より大きな器に水を入れ、それをすべて澄ませること。そして、さらに、濁った水を浄化するだけでなく、傷ついた植物を癒す練習も始めること。
「身体の調子を整え、心の平穏を保つこと。それが、何よりも大切だ」
父の言葉も、母の教えも、リオンの心に深く根付いていた。睡眠、食事、運動、そして魔力の訓練。それらを、毎日、一年間、ただひたすらに繰り返した。
リオンは、13歳になった。弟は6歳、妹は4歳になった。彼の体は、以前よりも一回り逞しくなり、その瞳には、揺るぎない意志の光が宿っていた。剣術においては、風を掴む感覚が、より確実なものとなり、振るう木刀には、確かに風の力が宿るようになった。魔法においては、母から託された訓練をこなし、少しずつ、その力を増していく。
リオンの日常は、ひたすら鍛錬に明け暮れる日々だった。しかし、その苦しい鍛錬の中に、リオンは確かな成長を実感していた。それは、いつか訪れるであろう、大きな変化への、静かな、しかし力強い助走だった。




