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第三章:風を掴む者、光を宿す者

一年という歳月は、静かに、しかし確実に、リオンの日常を形作っていった。毎朝、太陽が昇る頃、リオンは父と共に剣術の稽古に励んだ。木刀を握り、父の教えを心に刻む。一年前、岩に当たって折れた木刀の記憶は、リオンの心に深く刻まれていた。だからこそ、一振り一振りにより一層の集中力を注いだ。父の動きは相変わらず風のようだったが、リオンの剣にも、僅かながら風の気配が宿り始めていた。父が「風を掴む」と表現する、あの捉えどころのない感覚。それが、時折、リオンの剣筋に宿るようになったのだ。


午後は、弟と妹の世話に時間を費やした。活発な弟と、好奇心旺盛な妹。彼らの笑顔が、リオンの心を温かく満たした。賑やかな声に囲まれながらも、リオンの心の中には、常に母から教えられた、あの温かい魔力の流れがあった。


そして夜。家族が眠りについた後、リオンは静かに目を閉じた。母から教えられた通り、楽な姿勢で、ゆっくりと呼吸をする。体の内側を探り、あの温かい流れを感じようと集中する。最初は、ほんの一瞬、かすかに感じられる程度だった。しかし、毎晩、諦めずに続けた。指先から、足先から、そして体の中心から、魔力の温かい脈動が、徐々に、しかし確かに、その存在感を増していく。


そして、一年が経った、ある夜のことだった。いつものように、リオンが魔力を感じようと集中していた時、これまでとは明らかに違う感覚が全身を駆け巡った。それは、まるで、体の中から、柔らかな光が溢れ出すような、暖かく、心地よい感覚。指先から、手のひらから、そして腕全体に、その光が満ちていくのを感じた。


「…!これだ!」


リオンは、驚きと喜びで、思わず目を開けた。母に言われた通り、安定して魔力を感じられるようになったのだ。その温かい光は、まるで、自分の体の一部になったかのようだった。


その翌朝の稽古。リオンは、いつにも増して軽やかな足取りで、父の元へと向かった。木刀を握り、父の気配を感じる。そして、いつものように素振りを始めた。しかし、その瞬間、リオンの体から、自然と風が巻き起こるような感覚が生まれた。木刀を振るうたびに、空気が震え、風がリオンの周りを駆け巡る。


「…ほう」


父が、驚いたようにリオンを見た。


「リオン、お前の剣に、風が宿り始めたな」


父の言葉に、リオンは胸が高鳴った。一年間の地道な努力が、実を結んだのだ。剣に宿る風の力。そして、夜に感じられるようになった、体の中の温かい光。リオンは、自分の中に眠る力が、少しずつ、しかし確かに、目覚め始めていることを実感していた。それは、まだほんの始まりに過ぎない。しかし、リオンの心には、確かな希望の光が灯っていた。


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