表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

第十三章:規則正しい日々、そして新たな展開

リオンの冒険者としての生活は、慎重かつ着実に進んでいた。アッシュから教わった「失敗を防ぐ手順」を忠実に守り、毎朝、まだ夜明け前の薄明かりの中、北門から林へと向かう。


「傷んでいても、小さくても、15センチ以上あればいい」


依頼の条件を思い出しながら、リオンは、薬草を次々と採取していく。以前のように、完璧な状態の薬草だけを探す必要はない。傷んだものでも、魔力を注ぎ込めば、立派な薬草に生まれ変わる。そのことに気づいてから、薬草採取は、リオンにとって、短時間でこなせる、効率的な仕事となった。二時間もあれば、20株もの薬草を集めることができた。


林から戻ると、リオンは、父から教えられた基礎体力向上のための運動に励んだ。そして、剣の稽古。風を掴む感覚は、日を追うごとに確かなものになっていた。さらに、アリサから教わった魔力のコントロールの練習。指先から放つ光の強さや、持続力を、少しずつ高めていった。


夕刻が近づくと、リオンは、採取した薬草に、一日の成果を込めて、魔力の光を注ぎ込んだ。傷んだ葉が鮮やかな緑に変わり、萎びていた茎が力強く伸びる。まるで、魔法のようだった。そして、その魔法で蘇らせた薬草を、ギルドへと持ち帰り、依頼を達成する。


ギルドの宿に戻ると、リオンは、バルドとカイルと他愛もない話をした。バルドは、各地の冒険譚を豪快に語り、カイルは、ナイフ捌きのコツや、街の情報などを、時折、短く口にした。リオンは、彼らの話に耳を傾けながら、自らの経験や、修行のことなどを、差し支えない範囲で話した。


「お前、新人なのに、意外とやるじゃねえか」


バルドは、リオンの薬草採取の成果を聞いて、そう言って笑った。


「まあ、俺たちも、最初はそうだったからな」


カイルも、珍しく、リオンに肯定的な言葉をかけた。


そんな規則正しい生活が、三日ほど続いた。リオンは、冒険者としての生活に、少しずつ慣れ始めていた。しかし、その穏やかな日々は、長くは続かなかった。


夕食を済ませ、部屋に戻ろうとしたリオンに、ギルドの受付の女性が声をかけた。


「リオン君、ちょっといいかしら?」


その声には、いつもの親切さとは違う、どこか改まった響きがあった。リオンは、何事かと、女性の方を振り返った。


ギルドの受付の女性は、リオンを少し奥まった場所へと誘った。彼女の顔には、いつもの笑顔に加え、どこか期待の色が浮かんでいる。


「リオン君、あなたに、とても嬉しいお話があるの」


「嬉しいお話、ですか?」


リオンは、何のことだろうと、彼女の言葉に耳を澄ませた。


「ええ。あなたが納めてくれた薬草、ギルド長が、ある薬師さんに預けたんだけど、その薬草の品質を、その薬師さんが、とても気に入ってくれたみたいでね」


「私の薬草を、ですか?」


リオンは、自分の薬草が、そんな風に評価されたことに、少し驚いた。


「そうよ!その薬師さん、リオン君に、ぜひ、明日、夕刻までに、30株の薬草を納品してほしいって。それで、ギルドに、リオン君宛ての指名依頼がかかったのよ」


女性は、興奮した様子で、リオンに依頼書を差し出した。そこには、確かに「リオン」という名前と、薬草30株の納品依頼が記されている。


「ギルドから少し行ったところにある、調薬師『エリシア』さんの店よ。直接、その店に薬草を納品してほしいって言われてるわ。報酬も、いつものEランクの仕事より、ずっといいはずよ」


リオンは、依頼書を手に、その内容を確かめた。薬草30株。いつもなら、20株を納品して、それを売って得た報酬で、宿代を払うのが精一杯だ。しかし、30株となれば、さらに大きな収入になるだろう。


「…はい。この依頼、受けます」


リオンは、迷わず頷いた。これは、冒険者としての、最初の大きなチャンスかもしれない。


「ありがとう、リオン君!きっと、いい経験になるわよ!」


女性は、リオンの決断を喜び、店の場所を詳しく説明してくれた。


その日の仕事は、いつも通り、薬草採取から始めた。しかし、リオンの心は、いつもとは違う、特別な期待感で満ちていた。30株。そして、薬師エリシアという人物。彼が、自分の魔力で蘇らせた薬草を、どう評価するのだろうか。


リオンは、いつも以上に集中して薬草を探した。傷んだ薬草を見つけるたびに、魔力を注ぎ込み、立派な姿へと蘇らせる。その作業は、彼にとって、もはや単なる仕事ではなく、自身の力を試す、挑戦へと変わっていた。


夕刻。リオンは、30株の薬草を丁寧に袋に詰め、ギルドの宿を出た。薬師エリシアの店は、ギルドからそれほど遠くない、比較的落ち着いた通りにあった。古風な看板が掲げられた、薬草や香辛料の匂いが漂う店。リオンは、深呼吸をし、店の扉を開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ