第十章:旅立ちの決意、託された力
アッシュとアリサの言葉は、リオンの心に深く響いた。夢で見た、あの喧騒と混沌の世界。そして、目の前に示された、新たな可能性。リオンは、静かに、しかし確かな決意を固めた。
「父さん、母さん。僕、旅に出ます」
リオンの言葉に、アッシュとアリサは、静かに頷いた。その瞳には、寂しさよりも、リオンの決断を応援する温かい光が宿っていた。
「そうか。決めたんだな」
アッシュは、そう言うと、部屋の隅に置かれていた、古びた木箱を開けた。中には、一本の剣が納められていた。柄には、黒ずんだ装飾が施され、刀身は鈍く光っている。しかし、その剣からは、不思議な威厳のようなものが感じられた。
「これは、俺の親友からもらった剣だ。古くはあるが、風との相性は良いらしい。使い込めば、きっとすごい剣になるだろう」
アッシュは、剣を手に取り、リオンに渡した。
「大事に使ってくれ。お前なら、この剣の真の力を引き出せるはずだ」
リオンは、その剣を両手で受け取った。ずっしりとした重み。そして、手に伝わる、不思議な感覚。それは、まるで、風そのものが、剣の中に宿っているかのようだった。
次に、アリサが、リオンの元へ歩み寄った。彼女は、首から下げていた、細い銀の鎖のペンダントを外し、リオンの手に乗せた。ペンダントは、小さな青い石が嵌め込まれており、かすかに温かい。
「これは、私が友達からもらったものなの。何か、魔法が込められているみたい。あなたが苦境に陥った時に、きっと助けてくれるはずよ。だから、肌身離さず、持っていてね」
アリサは、リオンの首に、そっとペンダントをかけた。冷たい金属の感触が、肌に心地よい。
「ありがとう、父さん、母さん」
リオンは、二人の愛情を一身に受け、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
そして、旅立ちの朝が来た。東の空が白み始め、鳥の声が静かに響く。アッシュとアリサは、リオンを村のはずれまで見送りに来てくれた。弟と妹は、まだ眠っている。
「気をつけてな、リオン」
アッシュは、リオンの肩を力強く叩いた。
「いつでも、帰ってこいよ。ここは、お前の居場所だ」
「アッシュの言う通りよ、リオン。あなたのことを、いつでも待っているわ」
アリサは、リオンの頬に、優しくキスをした。
リオンは、二人に深く頭を下げた。そして、父からもらった剣を腰に、母からもらったペンダントを首に、新たな決意を胸に、歩き出した。背後から聞こえる、二人の温かい声援を背に、リオンは、未知の世界へと、その一歩を踏み出した。風が、リオンの頬を優しく撫でた。それは、まるで、旅立ちを祝福する、空からの声のようだった。




