第六章 襲来
夕暮れが施設を染める頃、空気の静けさは限界まで張り詰めていた。
モニターに映る波形は、以前よりもはっきりと規則的な動きを見せる。
研究室の照明がちらつき、冷房の風が不自然に揺れた。
窓の外、闇の中で何かが動いた。
その姿は、二足歩行の人間のようだが、肩や背中から長く硬質な四肢が伸び、関節が人間とは逆方向に曲がる部分もある。
先端は骨のように固く、振るうたびに床や壁に衝撃を生む。
赤く光る目が、施設の全域を冷たく見据えていた。
ケイド・マリンズは即座に指示を飛ばす。
「防衛ラインを固めろ!銃火は集中!」
SWATチームは訓練通りに配置につき、緊張の中で呼吸を整える。
生命体は跳躍し、机や設備を簡単に破壊する。
銃弾が命中しても四肢を振るうだけで弾かれ、建物の柱が揺れる。
攻撃速度は常人の視覚を超え、次々と隊員たちを吹き飛ばす。
テイラーは解析機器を盾にしつつ、冷静に波形を追う。
言葉にならない圧倒的な力に、誰もが声を失った。
廊下の照明が破壊され、火花が散る。
ケイドは倒れた隊員を庇いながら反撃するが、生命体の動きは計算されたかのように巧妙で、簡単には押し戻せない。
机や設備は次々に粉砕され、床は破片と血で覆われる。
テイラーは心の奥で祖父フランクが残した夢と現実のギャップを痛感する。
「…これが、あのメッセージの結果なのか…」
戦闘は瞬く間に施設内のほぼ全域へ広がり、生命体の圧倒的な存在感と力に人間は押され続けた——