第五章 準備
翌朝、研究施設は静寂に包まれていたが、空気はどこか張り詰めていた。
テイラー・バーグはモニターに映る波形を何度も見返す。
規則的なノイズは、昨夜よりもはっきりとしたパターンを持って揺れていた。
「…やっぱり、偶然じゃない」
ケイド・マリンズは施設外のセンサーをチェックしながら言う。
「通信ラインの乱れも増えてる」
SWAT隊員たちは訓練通りの静けさを保つが、誰もが心の中で緊張を高めていた。
施設の設備も微妙に異常を示す。
カメラがわずかに揺れ、センサーが瞬間的に赤く点滅する。
研究室の照明がちらつき、エアコンの制御も不安定になった。
まるで、何かが建物全体を探っているかのようだった。
ニュースやSNSでは、昨夜の大統領会見とは裏腹に「奇妙な信号が観測された」との情報が広がる。
市民の中には不安が増し、パニック的な投稿も少なくない。
テイラーは画面の前で拳を握り、冷静に解析を続ける。
ケイドは窓の外を見つめながら低く呟く。
「万全の態勢でいくしかない」
SWATのチームは迅速に防衛ラインを再確認し、武器や通信機器を点検する。
午後になると、波形の揺れはさらに顕著になり、明らかに規則性を帯びていることがわかった。
テイラーは解析画面の拡大を繰り返しながら、息を呑む。
施設内の空気は、静かな緊張で満たされる。
誰もまだ生命体を目にしてはいないが、世界は間違いなく、何か未知の力に触れ始めていた——