第四章 未知
大学附属研究施設の研究室は、ひんやりとした冷房に包まれていた。
画面には、祖父フランクが送信したアレシボ・メッセージの波形が映っている。
テイラー・バーグは解析を続けていた。
だが、いつもと違う。
波形が、不自然な揺らぎを見せる。
規則的で、偶然のノイズでは説明できない微細なパターンが潜んでいた。
「…もしかすると、何かが…来るかも?」
テイラーは小さく呟く。心の奥で、希望と不安が入り混じる。
だとすると——相手は友好的なのか、それとも好戦的なのか。
想像するだけで背筋がぞくりとした。
その夜、テイラーはSWATのボーイフレンド、ケイド・マリンズに連絡する。
彼は施設周辺の異常監視を任されており、万が一の事態に即応できるよう配備されていた。
外部でも異常は徐々に認識され、波形の解析結果は国家レベルに報告される。
ニュースやSNSでは「宇宙からの信号?」と話題になり、人々の関心と不安が入り混じった空気が広がった。
大統領は緊急会見を開く。
権力を誇示するタイプで、言葉には自信が滲む。
「市民の皆さん、この件については冷静に対処してください。現時点で危険の報告はありません。専門家が状況を監視しています」
その言葉に、人々の反応は二分される。
一部は安心し、また一部は不安を募らせた。
テレビやスマホ画面を通して、誰もが未知への予感を胸に刻む。
研究室に戻ると、テイラーは画面の微細な揺らぎに目を凝らす。
「…間違いない、これは偶然じゃない」
ケイドは窓の外を見つめながら拳を握る。
「何があっても、まずここを守る」
夜は深まり、静けさが支配する研究施設。
まだ誰も知らない、世界の運命を揺るがす何かが、静かに近づいていた——