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プロローグ:風のない世界
昔、世界はとにかくスピードが大事だった。
早く成長して、早く勝って、早く忘れる。
そんな時代だった。
でも、ある日、風が止まった。
誰もが気づいた。
「速いだけじゃダメだ。ちゃんと考えて、深くなることが大事なんだ」って。
そのとき、五つの国がそれぞれの“呼吸”を見つけた。
呼吸っていうのは、ただの息じゃない。
その国がどうやって成長して、どうやって人と向き合うかっていう“やり方”のこと。
そして、日本に似た国——静門国では、
ひとりの少年が“沈黙の呼吸”を受け継ごうとしていた。
名前はMinagi。
彼は、しゃべるよりも、空気を読むのが得意だった。
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