攻撃-ストライクⅢ-
セカイを集めてる。なんとも珍妙な言葉に司たちはなんと返したらいいかわからなかった。
「世界を集めてる?どういう事?」
「何かのゲームの話?」
「ひょっとしてやべー奴?」
「そんな子には見えんよー?むしろかわいいし」
反応は多種多様。当然の話だろう。
「ここにもセカイがあるはずなの。でもどこにあるのかわからないの。ここにあるはずなんだけど」
「なあ、それは何かの例えで言ってるのか?探し物があるなら付き合うけど……」
「?セカイはセカイだよ?みんながいる素敵な場所!」
「やっぱこの娘イッちゃってるな」
関わらない方がよかったかなーと司が思い始めたその時の事である。
突然全員のスマートフォンの緊急地震警報が鳴り響き、同時に地響きが起こった。地震が起こったのかと思ったが揺れはすぐに収まった。
「地震?やばたんじゃね?」
「結構デカかったなー」
「すぐ終わってよかった」
皆が安心している中、リサは突然立ち上がり、何かを探すように周囲を見て廻り、やがて外が見渡せるペンギンの水槽に向かっていった。
「来た……」
司が後を追おうとしたとき、床に落ちたスマホを拾って画面を見た遼太が叫んだ。
「み、見て……」
そこのライブ中継に映っていたのは……
数分前、遼太がネットニュースで見ていた場所にあった白い塔のような物体。その塔が消えたかと思ったらその下から巨大な牙なミミズのような巨大な怪物が出現した。牙が生えた目の無い顔に両手には二本ずつ合計4本の触手を持ち、たくさんのミミズが絡みついたようなその胴体は見る人が見れば生理的嫌悪感を抱かせるものだった。歩く地響きで大地を揺らし、両手を振り回して建物を壊しながら町の中を進んでいく。
「うそうそ!怪獣じゃん!」
あまりに現実離れした光景にのんびり屋の大和も驚愕する。
「何かの宣伝だろ?こんなのよくできたCGに決まってる!」
「違うみたいやで、ウチのスマホにも映ってる。信じられへんが現実の光景や!」
「何なんだよ……一体何が起こってるんだ……」
「このままいくと進行方向は……こっち!?」
怪獣はまっすぐにサンシャインの方角へ向かっているようだった。人々は慌ててエレベーターや階段だのに押し寄せてその場から逃げ出そうとしている。
そんな中でも一人不安げな表情を浮かべながらその場を動こうとしないリサ。司はリサの隣に向かい、言った。
「あれの事、知ってるのか?」
「……セカイをその身に宿したもの……世界獣」
「世界獣?」
その時、リサの持っていた犬の置物の目が光り始めた。まるでただの置物ではなく、意思を持った一匹の犬であるかのように……
同時にわあっと悲鳴が上がった。スマホのネット中継を見て見ると、怪物がサンシャインの目の前にたどり着き、建物をよじ登り始めたのだった。しかも向かっているのは司たちが今いる水族館のある建物。両手のミミズをロープのように伸ばし、建物に突き刺しながら一歩一歩よじ登っていく。
「何やってんだよ司!」
「俺たちも逃げるぞ!」
遼太と誠十郎が叫ぶ。しかし未だエレベーターも階段も避難しようとする人々で満杯の状態だ。司たち8人は完全に逃げ遅れている。
そしてとうとう怪物の触手が建物の上に突き刺さり、その醜悪な顔をのぞかせた。エレベーターがあった部分が触手で叩き壊され悲鳴を上げる人々。直に怪物と目が合ってしまい体が固まってしまう司たち。
絶体絶命…多くの人が死と向き合ったとき、リサの持っていた犬の置物が光に包まれ、空へ向かって飛び去って行ったかと思うと、巨大な一匹の機械の犬の姿に変身し、後ろ足で怪物を蹴り飛ばした。突然のことに対処できず落下していく怪物。
「え……」
蹴り飛ばした反動で空から落ちてくる機械の犬。犬は人型に変形し、腕組みをした状態でそのまま立った状態で宙に浮いていた。
唖然とする司を見下ろして、機械の犬は言った。
「見つけたぞ、もう一人の私」