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プロローグ
人生やり直したい。
頼む神様、一度でいい。
一度でいいから時間を戻してほしい。
悲しきかな、昨日設置された自動ドアには、見たくもない自分の姿が映っていた。
「安全第一」と書かれた傷だらけのヘルメット。
健康的とは程遠い生気の無い顔。
現場の埃と汚れを一身に受け止めたボロい作業着。
革靴は爪先の方なんか靴底が剥がれつつある。
安全靴履いてくれば良かった。
これが明日28になる俺の姿。
ガキの頃に思い描いていた「しょうらいのじぶん」には程遠い姿だ。
今日も明日も、こんな日々が続くんだろうか。
なりたかった自分の姿も、霞んでしまって思い出せない。
いつからこんな風になっちまったんだろう。
時間がもし戻ったら、もっと勉強して、もっと身だしなみにも気を使って…
瞬間、轟音と共に、視界が赤く染まり、体が宙に浮く。
皮膚の焦げる臭い、目の前から炎が追いかけてくる。
「逃げ…」
−−−−−ゴッ
鈍い音と共に、血の花火がコンクリートに咲く。
炎が追いつく暇もなく、頭部を壁に叩きつけられた俺はあっさりと死んだのだった。