084-錆びついた栄光
こういう事だったのか。
僕は内心、納得のようなものを抱いていた。
「問題」とは――――
『ある時、Veに所属する人間は気づいた。厳重に秘匿された、月の裏側にある施設に。その施設は、先史文明の持つ技術すべてを納めていた。それはVeにとって、広大な宇宙を旅する翼となるはずのものだった』
だが、そう上手くはいかなかったようだ。
『しかし、その技術を扱い、理解するためには――――我々の祖先には到底及ぶことのできない、超越的存在への到達が不可避だった。』
何が起きたのか。
それは、何の変哲もないある一日の事だった。
『始まりの八人の一人が乱心し、装置を起動しつつVeの国民を殺害して回ったのだ。だがそれは、宇宙へと飛び出すための一歩でしかなかった』
あまりにもおぞましい真実。
Ve’zの中央部であるアロウトは、Veに残された数万人の魂ともいうべき――――精神の融合から作られていたのだ。
『..........』
『残酷だと思うだろうか? しかしながら、多くの人間たちは、新たな肉体を得て復活した。素体である生身の肉体を捨てることができたのだ。そして、永遠の繁栄が齎された』
そこから、上へ上へと登っていくと、次の記録があった。
『勢いを増した我々は、まず宇宙に版図を伸ばした。資源を集め、植民し、永遠の命をあてにした上で危険な実験を繰り返した』
「.........」
『そして、我々はついに――――「ALDONA」の技術へと辿り着いた』
アルドナが何なのかは、書かれていなかった。
わざわざ書くべきでないことだったのか、それとも....
とりあえず、参照してみる。
『これは――――成程、禁忌とされるわけだ』
僕はALDONAについて調べて、頷く。
これがVe’zに何をもたらしたのか?
『我々の祖先は、愚考を犯した。干渉するべきでない世界の理を踏み荒らし、完全なる虚無へと戻そうとしてしまったのだ』
ALDONAは、世界の滅亡を引き起こしかけた。
だが、それでも尚。
Ve’zの人間たちは、繁栄の手を止めることはなかった。
『そしてついに、我々は知的文明とのファーストコンタクトを果たした。旧文明と呼ばれるそれを――――我らは当たり前のように蹂躙した』
Ve’zは、現在のキロマイア皇国の原型となったその国を踏みつぶし、国民から技術を奪い、彼らを奴隷とするでもなく惑星を滅ぼした。
その結果、多くの人間が故郷を追われ、広範囲に散った。
今の宇宙に広がる民族の基礎は、その国家だったのだろう。
『思えばそれが、我らの滅ぶ前兆だったのだろう』
さらに上る。
しばらくは意味のない歴史や記録だったので、重要な記述まで上がる。
その頃には、すでに二十六万年が経過していた。
『――――問題が発生したため、記録する。自壊を選ぶアルティノスが急速に増加している。理由は不明』
『....!』
もともと、自壊という手段を持っていたらしいアルティノスたちは、自分の本体記憶を破壊して自壊――――つまり、自殺という手段で数を減らし始めた。
理由は不明だが、僕が思うに.....飽きたのだろう。
他文明を蹂躙し、好き勝手に生きて、享楽に明け暮れて。
人間という生物は、永遠の幸福などという過ぎたものを受け止めるには――――脆すぎたのだ。
『......勝手なものだ』
僕は呟く。
そして、さらに記録を昇るのだった。
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