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079-決闘(後編)

「(つまらない)」


エリアスは、ケルビスと格闘しながら、別の事を考えていた。

アラタの意識が自分に交代したことと、もう一つの願いについてを。


「(被造物と戦う事で、永遠の幸福に到達できるのか?)」


考えても、答えは出ない。

だからこそ、戦い続ける。


『素晴らしい.....!』


ケルビスの触手による、四方八方からの鞭打をエリアスは躱し、ケルビスの背後に跳ぶ。

空中で一回転し、踵落としを放つが、ケルビスはその足を優しく受け止め、そのまま掴んで投げ飛ばそうとする。


「(無駄が多すぎる)」


エリアスは身体を大きく捻って抜け出し、ケルビスの触手による追撃を自分の触手で弾き返す。

その反動をそのまま使い、斜め左背後に跳ぶ。

ケルビスが前傾姿勢になったのを見計らい、ケルビスの加速に合わせて静止する。

そして、ケルビスが肉薄するのに合わせて身体を少しだけ動かし、ケルビスが前のめりになったところで足を引っかける。


『.....!?』

「はっ」


バランスを崩したケルビスに、エリアスは右拳で殴打を加える。

何かが砕けるような音と共に、衝撃波が発生するほどの勢いを受けたケルビスは、床に転がる。


『全て読んでおいでになられましたか.....』

「お前は、何故忠誠を誓う?」


その時、エリアスは胸の内の疑問を吐露する。


『それは勿論、貴女様が我々を――――』

「とっくにお前に命令はしていない。だというのに、何故権限者ではない私を、主と呼んで慕う?」

『........』


そう、アラタは既に、ケルビスを権限リストから除外していた。

ケルビスの主は、もうエリアスではなかった。

だというのに――――ケルビスは、エリアスを裏切るようなことはしなかった。


『私めは、被造物であると同時に――――先代より、エリアス=アルティノスを守れと命じられた存在でもあります。我が存在意義(レゾン・デートル)に従ったまで――――そう、言い訳するのは単純ですね』


ケルビスは再び立ち上がり、構えを取る。


『私めは、御変わりになられたエリアス様に、エリアス様のように何かを想う心と、命令に抗う事の出来る自我を手に入れました。その結果、私めは――――より一層、貴女の存在を意識した』

「有機生命体の、”恋”の真似事か」

『いいえ。そのような事は――――主従の関係を無視し、一方的な恋慕を押し付けるなど、あってはならぬことです』


ケルビスはエリアスに掴みかかり、両腕を触手で縛り上げて投げ飛ばす。

エリアスは空中で受け身を取り、触手を使って着地した。


『私めは、貴女を慕うあまり――――愚かにも、無限の忠誠を捧げる事にしました。そして、私めは.....貴女の領域を穢す者どもを許すわけにはいかなかったのです。』

「だから、命令に背いたと?」


エリアスは理解できない、といった様子で問う。


『もし貴女様の敵を排除できたなら、私めは消えてしまってもよろしい。その想いで、私めはここにいます』

「そうか」


エリアスは興味を失い、最早ケルビスを見てはいなかった。

ケルビスもまた、次の一撃が自分を死に至らしめるものだと、理解していた。


「.....」


エリアスの姿が消えた。

直後、ケルビスは前方に跳躍し――――回り込んだエリアスに胸を貫かれた。


『見....事....です』

「終わりだ」


最初の移動地点を読めたのは良かったものの、エリアスの速度よりケルビスは遥かに遅かった。

エリアスはケルビスを中央コンピューターから切り離し、とどめを刺すべくその頭蓋を掴んで持ち上げる。

一撃で握り潰すべく、その手に力がこもり。


「エリアス!」


訓練場に声が響く。

エリアスが視線をそちらに向けると、エリスがいた。

どうやら、カサンドラとシーシャによる阻止を振り払ってやって来たようである。


「何をしてるのよ! 喧嘩は程々にって、前に言ったじゃない!」

「私は.....」


エリアスは困惑する。

即座に表層にアラタが浮上し、エリアスを奥に引き込んだ。


「...すまない、少し罰ゲームを」

「罰ゲームじゃすまないじゃない!」


エリスは周囲を見渡す。

訓練場はクレーターとひび割れだらけになっており、エリアスとケルビスの服装はボロボロになっていた。


「だが、僕は君との約束を.....」

「ケルビスがやったらなら、ボコボコにした時点で充分罰よ! ほら、行きましょう?」

『必要ありませんよ、エリス様』


ケルビスは、エリアスに向き直る。


『さあ。私めにとどめを』

「エリスの前で出来るとでも、思っているのか?」


エリアスは呆れ果てたように呟く。


「.......ケルビス。お前を、エリスの専属にする」

『....? どういう事でしょうか』

「エリスに話をする。もしエリスが、僕を許さないと糾弾したのなら――――お前を、今度こそ消す」

『......承諾いたしました』


ケルビスは静かに呟き、跪いた。

それと同時にエリスが僕の手を引く。


「さあ、行きましょう」

「ど....どこへ?」

「厨房よ! 少し相談したいことがあったの」

「...わかった」


エリアスは、エリスになかば引きずられるようにして出ていった。

二人の姿を見て、ケルビスは思った。


『(あの二人の愛には、私の忠誠すらも及びませんね....)』


と。


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