070-掃討
その頃、ヴァンデッタ帝国の艦隊は大混乱に陥っていた。
『ガーダー様、緊急事態です』
「どうしたのだ?」
『全ての艦においてワープが出来なくなりました』
「それがどうした、すぐに直せばよい」
『......はっ』
別の艦に登場していた副官は、通信を切って溜息を吐く。
「直せるなら直しているのだがなっ」
「副官殿、大変です、Ve’zらしき艦船が出現しました!」
「何――――」
副官の言葉はそれ以上続けられなかった。
ニューエンドとアルカンシエルの直撃によって、副官のいた艦隊は即座に蒸発したからである。
「何だこいつらは!?」
「分隊長、指示を...うわああっ!!」
ラエリスを使うまでもなく、ヴァンデッタ艦隊は次々と壊滅させられていく。
しかも、通信は制限されておらず、味方に救援を求めていた。
「ガーダー様、友軍が救援を求めてきております」
「情けない奴らだ」
自分の功績の勘定しかしていないガーダーは、集まっていく残骸とそれに付随する技術しか見ていなかった。
実のところ、味方を周囲に分散したのも、まとめて壊滅させられるのを防ぐためであった。
以前にVe‘z領域を攻めた将軍は、それと同じ方法で壊滅させられたのだから。
「(わしは何と優秀なのだろうか)」
ガーダーは卑しい生まれであり、そこから何とか這い上がってきた強者でもある。
しかしながら、地位についた瞬間にそれに溺れ、膨れ上がった自尊心に屈した人間でもある。
それ故に、「予想外のことが起こるはずがない」という思考の罠に嵌っていた。
「ガーダー様、友軍が全滅しました」
「そうかそうか...では、もうすぐ敵艦が来るであろう、交渉してこの場を切り抜けるのだ」
「ガーダー様...!」
Ve’z相手に交渉が通じるはずがない。
斯くなる上はと、その男は廊下に出て、叫んだ。
「こちらガーダー艦隊、緊急事態が発生している。至急増援を寄越されたし、この命令はガーダー様直々のものである!」
と。
男としては死にたくない一心で行った行動だったが、それは敵を刺激するだけの行動であったのだった。
『敵旗艦を特定。救援艦隊を招集したようです』
『全艦、敵旗艦へワープ開始』
旗艦は転進をし始めるものの、現れたVe‘z艦に対して攻撃を行ってきた。
当然、そんな出力の砲撃など、Ve’zにとってはおもちゃの剣で切られたようなものに過ぎない。
『ニューエンド、放射』
『アルカンシエル放射します』
二つの究極兵器の連射により、旗艦艦隊は即座に壊滅した。
その背後に、後援の艦隊が到着するものの...
『座標計算、再度放射開始』
『再度放射します』
メッティーラとカサンドラによる連続斉射で、即座に塵と化した。
交渉の余地すらなく、完膚なきにまで。
こうして、ヴァンデッタ帝国艦隊は、抵抗すらすることも許されずに壊滅した。
ここからVe‘zの反撃が始まることを、帝国の愚者たちは...まだ知らなかった。
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