062-パワハラ
エリワンステップは、順調に復興していた。
Ve‘zの持つ驚異的な生体技術によって、エミドの奴隷になっていた人間たちは次々と解放された。
「お帰りなさいませ」
中央コントロールセンターへとテレポートした僕を、「彼女」が出迎える。
この間保護した、エミド人の女だ。
インプラントを抜いたが、ある程度の自由意志はあるようだったので、一度「説得」に出てみた。
充分なメリットを提示した上で、彼女の深層心理と対話したのだ。
「状況を報告せよ」
「は...い、元エミド兵は全体の82%を越え、地上に残存していたエミド建造物の接収率は99.9%です」
彼女にとってVe‘zとは、「憎むべき怨敵」ではなく、「主人に倒せと命じられた」存在に過ぎない。
それ故に、僕に対して複雑な感情を抱いているのだろう。
「フォーミドの反乱などは確認されたか?」
「現在教育中のため、特にありません」
僕は元エミド人をFormer(元)とエミドを組み合わせて、フォーミド人と呼ぶことを周知している。
忘れてはいけないのだが、エミド人はワームホールの遥か先にある別の次元からやってきた、人間とは異なる種族だ。
アディナ人はエミド人であって、フォーミド人ではない。
インプラントで制御されてはいたが、純粋なエミド遺伝子を持つのだ。
「では、お前に反乱の意思はあるか?」
「......答えて、どうするのですか?」
アディナが怯えているのが、数値でわかる。
僕に逆らえば、即座に消されるのが目に見えているからだろう。
事実、同僚だったらしいグンドはそうなった。
操られていたとはいえ、アディナ達は僕たちの領土を穢そうとした。
その罪は...
「言っておくが、僕はお前を許してなどいない。だからこそ、反乱の意思があろうとなかろうと、今すぐ消し去ってやってもいい。だから答えろ、反乱する気はあるか?」
「...ある。いくら今まで私たちがやってきたことが間違いだったとしても...それはそれ。私は、このクライアレンを取り戻す義務がある」
「それは、ジェキドに植え付けられた思想にすぎない」
「では...どうすればよかったのですか」
アディナがおずおずと尋ねてくる。
「死ね、それを命じられた時点で、自分の首を捻じ切ればいい。そうなれば、僕もお前を笑って許しただろう」
「......では、死ねと?」
「いいや、お前は僕の部下が拾った。つまり、僕への贈り物というわけだ、悪趣味な事にな」
贈り物を気に入らないからと捨てるわけにもいかない。
だからこそ、エミド人を救済するなんて手間のかかることをしているのだから。
「答えを探す事だな。僕はお前を許す気はないし、僕が止めなければ配下達はいつかお前を殺すだろう」
「は...い...」
緊張で硬直しているアディナを無視して、僕はコントロールセンターを去ろうとする。
釘を刺すには、少しやり過ぎたかもしれない。
少し飴も与えておくべきだろう。
「...とはいえ、反乱の心がありながら管理だけはしっかりとしているその姿勢は素晴らしい。次の報告書には何か欲しいものがあればそれを一つだけ記入しろ」
「......わかりました」
僕は一度も振り向かずに、アロウトへとテレポートした。
慣れないことをするのは、疲れるものだ。
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