052-エリワンステップ
クライアレンの状況は、はっきり言って最悪だった。
エミドの領域全体がそうなのかはわからないが、少なくともクライアレンに交渉可能な人間は一切存在していない。
コントロールセンターからの指令を受ける、エミド人しか存在していなかったからだ。
『彼等は脳にインプラントを埋め込まれ、コンピューターの命令に忠実に従います。キジラ=ノルティノスのような存在ですね』
集合意識に接続されている存在というわけで、コントロールセンターが破壊された今、なんの指令もなくその場で止まっている。
その目に光はなく、こちらの拷問などに抵抗する様子もない。
『如何されますか?』
「このままでは面白くないな」
僕はそう呟く。
放置すればそのうち餓死して死に絶えるだろうが、エミドに、そして僕たちに一方的に侵略された彼等にも多少の同情の念はある。
「ケルビス、彼等を制御している周波数帯は特定できたか?」
『はい、既に』
とりあえず、ケルビスに命じてエミドコントロールセンター(Ve‘z風味)を完成させる。
それを使う事で、一時的に彼らを生存させられる。
食糧生産施設を使え、食事をして適切な睡眠を取れ。
そんなことを指示しておいて、徐々に彼ら彼女らからインプラントを除去する。
「その後は考えていないが...」
『エリス様のための庭とするのはどうでしょうか? インプラントが除去されれば、エミドは再びここを手に入れるのに躊躇するでしょう』
「そうだな」
エリスはいつも少し寂しそうだ。
それは、僕やエクスティラノス達がいても変わらないだろう。
だからこそ、彼女に第三の故郷を作ってやりたい。
「いちいちインプラントを植え直していたら、その間にラエリスに撃墜される。敵も手を出しづらいだろう」
ラエリスは大気圏内での戦闘が得意だ。
重力制御で強引に飛行しているわけではないので、大気圏内では風を切って飛行できるのだ。
「...敵の名前を使い続けるのもおかしな話だ。ここを“エリワンステップ”と呼称する」
『素晴らしい名前です』
カサンドラから始まり、順番にエクスティラノス達からの賛同の声が響く。
エリス+One Step、つまりエリスの一歩という名前だ。
あまり格好のいい名前ではないが...
しかし、泣くという意味にもとれるクライアレンよりは、こちらの方が明るいイメージがあるように思えた。
「決定は下した。ケルビス、至急コントロールセンターを再建しろ」
『了解です、エリアス様!』
「......デザインは気にしなくていい、機能性を重視しろ」
『...承知致しました』
少し不満そうだ。
しかし、戦略重要拠点であり、芸術品ではないので...自重してもらいたかった。
そう、自重してもらいたかったのだ...
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