051-味見の一撃
クライアレン外縁部。
そこで、三隻の船がパトロールしていた。
漏れなく全員が、脳に電極を埋め込まれたエミド兵である。
『定時報告、問題無し』
『定時報告、問題なし』
『定時報告、問題なし』
『確認した、報告する』
哨戒中のフリゲート三隻からの報告を受け、旗艦である流線型の巡洋艦内部で眠る男はそう返した。
そして、男が本国へのリレー通信を行おうとした時。
通信が、唐突に切断された。
『...異常事態発生。トラブルシューティングを開始、再接続...』
いつもと違う事態に、艦隊の司令官であるエミド兵が慌て始めた時。
視界の真ん前で、巨大なワームホールが口を開けた。
『緊急事態発生、緊急事態発生。外部との通信が切断、ローカル通信は良好。ワームホール内部に複数のワームホールゲート確認。ただし、中央コントロールセンターへの攻撃は依然として無し。全艦、直ちに帰投し防衛を行え』
そんな通信が、コントロールセンターより発令された。
エミド兵はこの上位の指令に逆らえないため、慌ててワープ態勢に入るものの...
『捕まえた』
アドラスの艦隊から放たれた重力波により、ワープを妨害されてしまう。
先行していたフリゲート艦隊は逃げ遂せたが、巡洋艦三隻はVe‘zのセントリーレーザーによる射撃を受け、爆沈の憂き目に遭った。
『第四惑星監視ステーション、沈黙』
『第七小型船舶港、通信途絶』
ワームホールを破壊されたクライアレンは、凄まじい勢いで侵攻を受けていた。
ニューエンドとアルカンシェルの斉射により、ステーションや基地は一撃で破壊され、指揮系統を失い混乱する小型艦隊は、迷走の果てにアドラスと遭遇して壊滅させられた。
星系中に散らばったカナーティ=ノクティラノスが、領域監視用の装置を係留していく。
中央コントロールセンターの残骸を片付けたノクティラノス達は、喜んで立派な城砦を建造し始めるのであった。
「...早過ぎる」
僕はその惨状に、驚きを隠せなかった。
もう少し善戦すると思っていたのだが、コントロールセンターが陥落すると同時に全ての艦船が沈黙した。
「だが、意外な弱点が発覚したな」
エミド艦はなんらかの方法でコントロールされており、内部の人間はそのコントロールが切れると何もできなくなる。
『現在拠点を構築中です、エリアス様にお見せできるような、モニュメントのような役割も兼ねています』
「...そうか」
そのサービスは必要無いのだが...
しかし、ノクティラノスが勝手に始めたことであれば、それを尊重しよう。
「さあ、ワームホールの次点収束場を狭めろ。ここを起点に、エミドに噛み付く」
『仰せのままに』
ジェネラスは通信の向こうで、不敵に笑ってくれた。
ここからやる事は限られる。
まずは、Ve‘z領域を襲ってくるエミドの撃退。
次に、エミド領域への侵攻。
そして、エミド支配領域の植民地化。
簡単に奪還できなくするために、ワームホール内で補給を完結できるようにするべきだ。
セルフメンテナンス式のアドラスと違って、ノクティラノス達は自力修復はほぼ出来ない。
現地調達は視野に入れておいたほうがいいだろう。
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