293-『A’Rearth』
一週間後。
僕はケルビスと連絡を取っていた。
『勝ったのか!?』
『はい、少しばかり時間はかかりましたが....アロウトの中央ブロックが何故か復旧したため、ノクティラノス艦隊を動かし急ピッチで王国を攻略し、連邦を完全に戦闘不能状態に追い込んだとの事です』
『アロウトが....』
僕は義体の機能を使い、アロウトのメインフレームにアクセスを試みる。
すると、接続エラーが出ていたのが.....繋がった。
コアブロックのみ復旧しており、緊急防壁等も作動していた。
指揮権が僕に戻って来た事で、エクスティラノス達との通信リンクも復旧する。
『皆、現況を報告せよ!』
『こちらカサンドラ、アロウト周辺で残骸改修作業中です』
『こちらメッティーラ、アロウトのコアブロック付近に展開し待機中。命令があればすぐに行動します』
『こちらタッティラ! エリガード内部で待機中!』
『こちらシーシャ、待機中です』
『こちらケルビス、メッティーラと共に待機中です』
『こちらジェネラス! Ve’z星系の偵察中です』
『こちらアドラス、待機中!』
『こちらポラノル、待機中です!』
『こちらグレゴル、シーシャのバックアップ作業を引き継いでいます』
『こちらケイトリン、グレゴルのアシストとして演算領域を貸与中』
『こちらシュマル、推進機関のメンテナンス中ッス。すぐにアロウトへ向かうッス』
『こちらナル! エリアス様をお守りすべくコジャスラにて待機中!』
どうやら全員そろっているらしい。
ならば、問題はない。
『王国と連邦の首都はどうなった、ケルビス?』
『惑星と全建造物は破壊しました、逃げ出した人間たちは隣接星系で襲撃をかけ全滅です、チェック漏れに関しては後程調査します』
『分かった』
容赦なく全滅させたらしい。
分かりやすい様にとケルビスがまとめた報告書によると、王国の殲滅進捗は76%、連邦は89%のようだ。
流石に領土が広大であり、多くの戦力を失ったうえ、工廠もない現状では厳しいか。
早くにアロウトを復旧しないといけないが、すぐにというのは難しいだろう。
まずはデブリを撤去し、そこから残ったルナティラノスや作業用ドローンによる作業を始めなければ。
『今日中に新アロウトの案を提出する、全員現在の任務を続行、待機中の者はアロウトに集結、各自で相談し業務を分担せよ』
『『『『『『『『『『『『了解』』』』』』』』』』』』
通信を切ると、僕は肺に溜まった息を吐く。
どうやら、問題は片付いたらしい。
あとは、目の前にある面倒を片付けるだけだ。
『アロウトの再構築を開始する』
アロウトは現在、コアブロックのみが露出した状態だ。
即ち、コアブロック以外の要素は自由にカスタマイズできる。
であれば、選ぶ形状はただ一つ。
『形状は惑星型』
コアブロックを重力防護フィールドで覆い、それを覆うように内部施設を展開。
流石に惑星の中でも大型のサイズになってはしまうが.....
しかし、それをする価値は十分にある。
『表面に岩盤層、地面層を形成。更に外側には大気圏を...』
惑星フィオをベースに、大気と海のある惑星をアロウトの外周部に形成していく。
『庭園』じゃなく、本当の『楽園』として過ごせるように。
同時に、これは僕の初期目標に対しての妥協でもある。
もう地球には帰れそうにないし、何より帰りたくない。
僕の弟や妹の話を聞く限り、もう帰る場所はあの星には無いだろうから。
『アロウト(A’Rought)は今日よりアラース(A’Rearth)に改名する』
あの場所こそが地球。
それでいい。
アロウトに帰れば、地球に帰った事になる。
アラースこそが、Ve’zの中心になる。
そう思っていた時、通信が入った。
『エリアス~』
『どうした、ティニア?』
『アイス買ってきたから皆で食べようと思ってるんだけど、来れるー?』
『すぐ行く』
『分かった~』
まあ、今はただ案でしかない。
エクスティラノス達と相談し、完成する頃には別物になっているかもしれないからな。
僕はブリッジを離れ、皆の居る別荘に向けて歩き出した。
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