292-ミッドナイト・ラブテイルス
深夜。
ティニアの別荘にあった広めのバスタブで身体を洗った僕たちは、キングサイズのベッドを三つ繋げた強引な添い寝を実行した。
ニトのクローンたちとキシナは介護が必要なため、アディナがつきっきりで寝かせている。
「えへへ~なんだか、妖しい雰囲気~」
『何もしないぞ、寝るだけだ』
「あら、そうなの?」
ベッドの上を転がるティニアを見ながら、別に絡み合ったりするわけではないぞ、と伝えると、背後から声がかかる。
振り返ると、寝衣に身を包んだエリスが立っていた。
紙みたいに薄いネグリジェだ。
どこからそんなものを.....
「えへへ、私が用意したの」
『今日は寝るだけにしてくれ....』
「分かったわ」
僕はベッドに横たわり、天井を見た。
その時、二人が両側からくっ付いてくる。
「こうやって寝るのも久々ねえ」
「昔よく、お母さんとこうやって寝たな~」
僕の睡眠は、無理やり意識を消失させるものなので、二人が眠るまで付き合う事にした。
だがその時、ニトがやってくる。
「吾輩の寝るところはどこだ.....?」
『こっちに来い』
「うむ」
ニトに続いてサーシャが現れ、当然のようにエリスに張り付いて寝転がる。
エリスも別に嫌がっていないようなので、僕は放置する。
ニトは僕の隣で眠り出し、雰囲気が落ち着いてきたとき。
「そういえば、アルクレイスさんから連絡がありましたよ」
『何っ!?』
すっかり忘れていた。
そういえば、戦乱から逃すためにカルメナス方面に行かせていた。
シャドウカルメナスの庇護を受けている間は大丈夫だと思ったのだが...
「なんて?」
「はい、お姉様。カルメナスの平定は大分終わったそうなので、もう少しで帰れそうだと。こちらの状況は伝えてあるので、一ヶ月後にカニマに来るそうです」
『そうか』
アルクレイスが増えると、もっと賑やかになるな。
そう思っていると、サーシャはひっくり返って眠り始めた。
仮にも皇族の筈だが、エリスの義妹として過ごした時間が長かったからか、だらしない部分が増えている。
本人が幸せなら良いのだが...
「あ、そうだ! 眠れないし...恋バナしよう!」
「女王様じゃなかったの? 随分俗っぽいわね...」
「言ったでしょ、昔はその辺の小娘だったもん!」
そして、唐突なティニアの提案により始まった恋バナ大会。
と言っても、この場にいるメンバーではあまり期待できないが。
サーシャの昔好きだった幼馴染の話を聞いていて、僕は唐突に思った事があった。
『そういえばティニア』
「何ー?」
『ジアンとはどういう関係なんだ?』
「あっ」
ちょっとした意地悪のつもりだったのだが、ティニアはそれっきり黙ってしまう。
更に意地悪したくなり、僕はエリスの方を向いていたがティニアの方に向き直り、彼女の顔に自分の顔を近づけた。
『何かやましい事があるのか?』
「な、何でもないよ?」
『そうか』
「ひゃっ!?」
僕は彼女の鼻を舐めてやった。
犬がよくやるやつだ。
飼った事はないが、親戚のお犬様(実際の名前はポチ吉だ)にやられてしまった事はある。
『素直に話してくれないなら、希望通りにするしかないな』
「あ、それって宣戦布告? いいよ、好きにして!」
『腕相撲で勝負だ』
僕は冷酷に、彼女に向けて言い放ったのであった。
「ううっ...ぐすっ、ズルい...」
『面白い話をありがとう』
結果として、僕は勝利した。
大人気ない勝利だったが、彼女とジアンの関係性を知る事ができて良かった。
恋仲なのかと思ったが、単純に幼馴染らしい。
ティニアを女王にプロデュースしたのは彼であり、彼女の一番の恩人ではあるが、恋人ではないそうだ。
満足したところでエリスが欠伸し、全員で眠る流れになった。
戦いを終え、僕らは初めて息を抜いて眠った。
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