285-神々の港の最後
ユグドラシル星系に移動した四機は一斉に散る。
それぞれの得意分野を生かし、するべきことをする。
カサンドラとアドラスは真っ先に敵の主要要塞であるとされる「オリジンスター」攻略に出向く。
『それでも凄まじい数ですね』
『だけど.....単調!』
要塞の周囲にはおびただしい数の艦船が配備されていたものの、陣形が単純であり、今までの連邦の練度とは比べるべくもない。
ワープアウト直後、砲撃が集中する。
カサンドラのコマンダント・エクスティラノスは武装が貧弱ではあるものの、アドラスは違う。
『いっくよーーー!』
超兵器『アビサルゲート』が起動。
カサンドラとアドラスの正面に形成された重力場が、接触したレーザーやビームの軌道を捻じ曲げる。
そして、リディーマー・アルト・エクスティラノスの艦首部分が変形。まるで鰐の顎のように開き、重力制御システムが重力場そのものを加速させるトンネルを形成。
展開された球状の重力場が、外向きではなく内向きの重力場に変化して周囲の重力場トンネルと反発して加速、一挙に艦隊の中央へと叩き込まれた。
艦隊は陣形を維持できなくなり、重力場の内側でぶつかり合って自滅していく。
『どかーん!』
そして。
重力場が弾けると同時に、内部で圧縮されていた爆風が解放される。
生きている艦船やその残骸がそのままクラスター爆弾のようになり、周辺の艦隊を突き崩す。
『IOB発射準備完了、発射します』
カサンドラの船体の四部分に収縮させられていたIOB....インフィニティ・オメガ・ブラスターが放たれる。
これは、電荷の上限値が存在しないオメガと呼ばれる(エリアス呼称)極小の物質に、コマンダントのマイクロ・メビウスドライブから生成される無限の熱量を纏わせて発射するというモノであり、直後にアルファと呼ばれる物質(エリアス命名)をぶつけて任意の地点で炸裂させることで、瞬間的に任意の範囲に任意の時間だけ熱量を発生させられるというものである。
充填時間は15秒、同じ地点に向けて連続発射することで、前のIOBを受けたオメガがその熱量を吸収し更に膨大な熱量を持つことも出来る、地味ながら強力なものである。
それが何発も何発も放たれ、木星程の大きさにまで拡張したオリジンスターを、容赦なく削り取っていく。
『おや.......? これは?』
そして。
内部まで貫通した瞬間、カサンドラはその内部にステーション型の何かがある事を発見した。
即座に分析すると、『ホールドスター:Noa-Tun』という名称が分かった。
組織の名前の由来を学んだカサンドラは、遠慮なくIOBを叩き込んだ。
Noa-Tun側も、最大出力のシールドで臨んだものの――――IOBの対策は、空間を遮断する以外で存在しない。
何故なら攻撃手段は純粋な熱量であり、アリの巣に融けた金属を流し込んでいるようなものだからだ。
たった二隻という寡兵で、Noa-Tun連邦の本拠地は陥落することとなった。
『さあ、後は掃除だけですね』
『うん! コイツらは依然として脅威だもんね!』
合わせ技である。
IOBとアビサルゲート、足し算して何が起きる?
そう。
即席の超熱量爆弾である。
いいや、吸い込み式の太陽爆弾にもできてしまう。
重力場の塊という、逸らすことも防御する事も出来ない「現象」が、連邦艦隊に牙を剥く。
最早、数や質の問題ではなかった。
Ve’zを本気にさせる前に、一気に攻め込むべきだったのだ。
そうしない傲慢さと無駄な慎重さが仇となり、連邦は戦力を失っていく。
『ナルは上手く行っているでしょうか?』
『杞憂だと思うけど.....』
カサンドラの心配を他所に、アドラスは最後のアビサルゲートを放つ。
既に多量の熱量を吸ったオメガを取り込み、最後に巻き起こった爆発は、残存していた艦隊を薙ぎ払い、二隻の元まで到達した。
それを重力場で捻じ曲げ、得意げにするアドラス。
カサンドラはそれを見て、安堵したように笑った。
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