278-回想『GENNER'OUS』
拙者の名は、ジェネラス=エクスティラノス。
エリアス様により、ケルビスの次に生み出されたエクスティラノスである。
とは言え、拙者にはこれといった役割は特にはなかった。
ノクティラノスより一個上の権限を与えられ、当時Ve‘z領域の外縁部にのさばりつつあった海賊を掃討するために指揮官として赴任した。
Ve’zは不干渉Ve’zが不干渉を貫いて来たため、かつてVe’zが世界を支配した伝承は失われつつあったようだ。
特に、自らの強さを見誤る傾向にある不法者達には、拙者らの恐ろしさを理解するだけに足る能は無かった。
『よくやった。メッティーラの任務の一部を割り振るので、これからはそれを行え』
『はっ』
一ヶ月と経たずに海賊を根絶した拙者は、メッティーラの警備任務の二割ほどを管轄することとなり、何も不満など持たずにそれをこなした。
Ve’z領土に侵入する愚か者など本当に居るのか、そう疑問に思うだろうが、居るのだ。
先の海賊のように、自らの実力を見誤る者。
人間の間で流通する貨幣を稼ぐため、Ve’zの遺跡に盗人に入ろうとする者。
或いは、たまたま迷い込んでしまった者。
それらを、拙者らは発見し次第撃墜していった。
今思えば、たまたま迷い込んだ者達には申し訳ないと思っている。
しかし、当時の拙者にそれを判断するための行動は組まれていなかった。
『貴方は、識別子が付合しなければ撃つのですね』
『交渉など無駄ですから』
『そうではなく、エリアス様の関係者であったならどうするのですか』
『本当に関係者であれば、来客リストに載っているはずです、エリアス様に例外はありませんよ』
メッティーラはそんな拙者の行動を咎めたが、所詮はエリアス様に作られていない存在。
エリアス様に疑いを持つことこそ、最大の汚辱行為だと何故理解しないのか。
拙者はその後、ケルビスが受け持つはずだった任務を託され、乗艦をエクスターミネーター・ノクティラノス(エクスティラノス仕様)からクルスラ・エクスティラノスへと乗り換えた。
まだ主力艦級の戦闘能力は持たず、推進能力と隠密に特化した艦であり、後にジェネラス・エクスティラノスに乗り換えるまでは拙者の乗艦であった。
拙者はいくつもの国々を渡り歩き、Ve’zのシンパを見つけては精神リンクにより交流、カルト的な性質を利用して国の情報を抜き取り、アロウトに受け渡していた。
『.....何が起きた?』
そして。
それから数千年が経ち、交渉していた国家が遥かに発展を遂げた時。
唐突に、アロウトからのリンクが切断された。
何かが起きた、しかしエリアス様は何もするなと仰っていた。
であれば.....何もしないのが正解だと、当時の拙者は判断していた。
ワームホールに身を潜め、復旧を待った。
そして。
そして――――数千年が流れる。
拙者は創られた意思、待つ事には慣れていた。
しかし、常に脳裏には不安があった。
エリアス様に何かあり、アロウトが停止しているのではないかと。
戻ろうかとも考えたが、エリアス様は厳しいお方である。
拙者が戻れば、命令違反になってしまう。
『それは...苦痛であった』
『なんだ、君らしくも無いね』
拙者は横に目を向ける。
そこには、並行して飛ぶグランドマスター・デウスエクスティラノスが居た。
拙者は目を瞑り、当時のことを再び想起する。
『再び忠誠を誓え、振るうべき場所で剣を振るうのだ』
自壊すべきかと考えていたある時。
急にアロウトとのリンクが復旧し、エリアス様のお声が響いた。
これは馳せ参じる以外の選択肢など無いと、拙者は急いで動き出した。
...もっとも、数千年経っていたことで、ワームホールの経路が変わっており、拙者のジェネラス・エクスティラノス自体も経年劣化に陥って居たのだが。
適切な自己保全システムを施していれば、こうはならなかったのだが。
当時、アロウトに戻った際にタッティラに苦言を吐かれたのをよく覚えている。
『振るうべき場所で...この時であったか』
いいや。
違うであろう。
あの御方は、この時を含めた全てを想定してらっしゃった。
その全てを含めた一言だったのだろう。
『行くぞ、ケルビス』
『ああ、言われなくともね』
あの御方は敵の首領と戦っている。
露払いは騎士の仕事である、我等の仕事を始めよう。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




