259-決戦4
エリアスの義体から、虹色のオーラが噴き出していた。
ずっと平行線だった二人の意識が、今目的を一つとして、束ねられているのだ。
『そうか...』
『私たちは、それぞれで別のキネスを持っていたのか』
調和のキネスは、アラタの持っていたもの。
そして、エリアスのキネスは...彼女の願いに呼応したもの。
それは、移譲。
エリアスが持っていた力が、アラタに移されたことで、キネス能力そのものが強化された。
その上で意識を統一させれば...
『力が...溢れる...』
『温かい...こんな感情は...知らない』
アラタは凄まじい力を、エリアスはずっと求めていたものを手にしていた。
そして、虹色の光は機体を包み込む。
アラタの魂という形に宿っていた『聖遺物』としての性質が委譲され、機体そのものがキネス能力の媒体となる聖遺物へと変質して行く。
『これは...!?』
『眩しい...何だ?』
シンもカルも、その光を見て畏怖していた。
まるで可能性そのものが、そこに集っているようにも見えたからだ。
だが、そこにあるのは調和。
停滞や消滅ではなく、本当の意味での調和が、二つの現象回路を通すことで、より完全な形で実現されているのだ。
『なんで...なんで!』
『流歌! 動きが...鈍いか!』
調和の光に照らされて、リヴァイアサンがオーラを失い落下を始める。
引力に引っ張られているのだ。
支える力を失ったリヴァイアサンを、腕を伸ばしたケテルがキャッチする。
『調和は乱されない』
『よくも妹を...俺の全力、受けてみろ!』
ケテルの全身の装甲が、純白に染まって行く。
それと同時に、エリアランツェの装甲もまた、虹色へと変わって行く。
直後、ケテルから放たれた高出力の破壊の波動と、エリアランツェが腕を伸ばした先から伸びた調和の波動がぶつかり合った。
『宇宙を破滅に導く力か...』
『理に反する』
『『消えよ』』
直後。
調和の波動が、破壊の波動を飲み込みケテルにぶつかった。
『ぐわああああああっ!!』
装甲の色が元に戻ったケテルを、エリアランツェが容赦なく砲撃する。
バラバラに破壊されたケテルが、引力に沿って落下して行く。
『よくも...よくもお兄ちゃんをおおおッ!』
再び緑の光を纏い、一直線に突っ込んでくるリヴァイアサン。
それを見て、エリアスは心の内でアラタを見た。
アラタは頷く。
『最終兵器、充填完了』
『Ve‘Lie’Az』
エリアランツェの中央アイカメラが変形、そこを砲口として、極光が放たれた。
それはリヴァイアサンへと直撃し、オーラによって防がれる。
『Ve‘zの魂よ、調和せよ!』
だが、防がれた光は再度エリアランツェに集い、伸ばしたビームランスに纏わりつく。
そして、巨大化した右のビームランスを、エリアランツェは思い切り正面に伸ばした。
『これで、終わらせるぞ!』
『ああ、分かっている』
真っ直ぐ伸ばされた槍は、リヴァイアサンの腹部に直撃する...寸前でオーラに受け止められる。
リヴァイアサンの全身のオーラをそこに収束し、受け止めているのだ。
『理解不能、演算不能...』
『妄想、幻想、全部リアル...か。ぉおおおおおおおお!』
昔読んだ何かの漫画の受け売りを口にしたアラタは、キネスの力を全力で出し切るつもりで咆哮する。
オーラを貫通し、槍がリヴァイアサンに突き刺さった。
キネスによって強化された装甲を貫通し、背中側まで突き抜けた槍は、リヴァイアサンを上下で真っ二つに引き裂いた。
オーラを失った機体が、ヴェリアノスプライムの重力に引かれ落ちて行く。
『はぁ、はぁ...』
『...らしくない事をした』
『らしくない、違うなエリアス。僕が今やVe’zの支配者だ』
だから...そう続けようとしたその時。
自爆寸前のリヴァイアサンから、何かが分離した。
『なっ!?』
『脱出用の戦闘機が付いているのか...』
リヴァイアサンから離脱した戦闘機を、エリアランツェは狙う。
だが、そこに予想もできないものが飛んできた。
『ケテル...?』
『以前観測したタイプだ、恐らくはアレは外部装甲だったのだろう』
『言ってる場合か?』
『分かっている』
重力圏を突き抜けて、ケテルが現れた。
だがそれは、先ほど破壊した大型のものではなく、リヴァイアサンとほぼ同サイズのものだった。
大型化改修されたわけではなく、大型の外骨格を纏っていたのだ。
『逃すな!』
『分かっているが...』
ケテルは音速でリヴァイアサンの戦闘機を回収すると、そのままワープに移行してしまう。
ワープ先は...
『まずい、アロウトだ』
『すぐに追う』
追い追われて、最後には追撃。
既に全てのシールドトランスファーアレイが失陥している事を知っているアラタは、焦燥に駆られた。
居住区に消滅光を撃たれれば、エリスたちは全滅だ。
エリアランツェもワープドライブを起動し、ケテルの航跡を追った。
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