255-守護神の喪失
その頃。
アバター艦隊は全体の三分の二を失いつつあった。
リバースストラクチャはそう何度も使えない。
だが、しかし。
Ve‘zの本領とは、圧倒的な戦力である。
空間圧縮された格納庫に、親衛隊のスペア艦が何百隻とあるのだ。
そして、減れば補充が時間の加速された工場から送り込まれる。
その艦船の製造に必要な資源は、既に備蓄が充分にあり、減れば減るだけ、宝物殿内部の惑星やアステロイドベルトから採取される。
つまりは...ジリ貧である。
Ve’zを本気にさせた時点で勝ち目などなかったというわけであった。
『ウィング4、壊滅!』
『艦載機帰投、未帰還65機!』
戦況は絶望的であった。
エクリプスレイの対策ができない以上は、やられる一方であるからだ。
おまけに、艦載機も、ミランセス=ルナティラノスから出撃するフリーゲ=アポスティラノス相手に苦戦を強いられていた。
『失敗でしたか...』
アインスは自分の過ちを認めていた。
ここは止めるべきだったのだ、総司令官シンの機体があれば、敵艦隊を一掃することは問題ではなかった。
既に各地のシールドトランスファーアレイは破壊されており、アロウトまでの道は開けている。
だが、この機に乗じるための突破力が不足していた。
『敵艦、直上!』
『なっ!?』
直後。
Ve‘z艦隊が、連邦艦隊の真上へワープアウトする。
中央にいるケルビスが率いているものだ。
『全艦、敵旗艦へ総攻撃!』
『緊急加速!』
光の雨が降り注ぐ。
それを回避するように、アバターはスラスターを全開にして逃げ始めた。
上部に次元断層を作り出し、攻撃を防ぐ。
『無駄だと理解するべきだな』
特殊仕様アルバレスト・ルナティラノス10隻が、アバターの艦橋目掛けて次元転換砲を放った。
量産に限定的に成功したそれは、次元断層を貫通してアバターの艦橋を貫いた。
『Noa-Tun連邦、万ざ...』
艦橋が完全に崩壊し、アインスは死亡。
アバターは制御を失い、直後にエクリプスレイによって貫かれ、撃沈された。
アバターのコンピューターを通して指揮を出していたため、この場にいる艦隊は完全に沈黙した。
『お兄ちゃん、アバターが...』
『...そうか、アインス、すまない』
同時刻。
何かを感じ取ったカルは、兄に対して報告していた。
激戦の最中ではあるものの、シンはそれに対して暫し黙祷し、再び攻撃に転じる。
『エリアス様、敵の旗艦を撃墜しました』
『理解している』
液体に満たされたカプセルの中で、エリアスは頷く。
アラタと違って、エリアスは精神リンクを活用するからだ。
『しかし...油断はできないな』
『加勢いたしますか?』
『不確定要素が増えるのは避けたい、来るな』
『了解です』
キネスキャンセラーを持たない者が、この戦いに介入しても無意味であるとエリアスは感じていた。
『厄介な』
『囲まれている』
『そうだな』
四方八方を飛び回るビットからは、直撃すればその部分が消滅する光が一直線に放たれている。
それを一瞬の間隙を縫って回避しながら、エリアスとアラタは考える。
何を最優先に撃破するかを。
『そうだ、エリアス。ニトに思念を送ってくれないか』
『...理解した』
ニトはキネスを見抜く眼を持つ。
ならば、この場合においてどちらが先にガス欠するかを見抜くことが出来る。
『...どうしたのだ、吾輩に頼りたいことがあるとのことだが』
『今、キネスユーザー二人と交戦中だ、相手の力と残量はわかるか?』
『少し待て』
ニトの返答はすぐに来た。
『エリアス、君から最も遠い者は恐らくは消滅、あるいは破壊のキネスを持つ。残量は中半ば程、その隣は...分からない、変動性のあるキネスなのか、そもそも別種の力か』
『後ろだッ!』
『分かっている!』
直後。
背後に回り込んで来たリヴァイアサンと、エリアランツェは切り結ぶ。
そこに容赦なくビットによる包囲射撃が挟まり、リヴァイアサンと位置を交換する形でエリアランツェは動く。
リヴァイアサンは消滅光を曲げ、再び距離を取る。
『連携が巧み過ぎる』
『だが、隙はいくらでもある。コストをどれだけ支払うかの差に過ぎない』
隙を突くために、何を犠牲にするのか。
それさえ決断すれば、連携を破ることは容易い、とエリアスは言った。
『まずはビットから潰す』
『分かった』
エリアスが眼を閉じると、片側だけが赤く輝く。
エリアスとアラタが半々、兵器をアラタが、操縦をエリアスが使う形であった。
タッグ相手に、タッグで応じる、当然のことであった。
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