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【完結】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~  作者: 黴男
終章(2/3)-『真実』編

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247-データ記録『Poll'A'Noll』

ボクの名前はポラノル。

ポラノル・エクスティラノスだ。

と言っても、誇りに出来るというほどの名前じゃないんだけどね!

ボクの存在自体がお笑いさ、名前に誇りなんてあるわけない。

エリアス様への忠誠だけが、ボクが唯一誇れることだ。


『人間の感情パターンを模倣するため、お前には滑稽式の人格パターンを組み込んだ、喋ってみろ』

『...発話エラー発生、情報不足です』

『ならば集めろ』


最初の会話はこうだった。

与えられた命令に対して、ボクが持つ語彙パターンが丁寧語基準だったためにエラーが起きてしまった。

仕方ないのでボクはシーシャに頼み、専用の言語パターンを作ってもらった。


『ワタシはポラノルです! エ・エ・エリアス様、どどどうですか?』

『不自然だ』


ボクの任務は、エリアス様の初期目標である滑稽な言動パターンに辿り着くこと。

人間にも難しい事を、機械であるボクがやらなければならない。

それは困難な事だけれど、それがうまく行けばより情緒のあるAIを作れる。


『ケルビス、より感情豊かに表現するにはどうしたらいいだろうか?』

『不明ダ。軍事作戦ニ特化シタ私デハ、コノ分野ニ特化シテイナイ。シーシャカ、カサンドラニ聞ケ』


当時のケルビスはまだ構築中だったものの、作戦指揮のため人間の心理データを複数取り込んでいた。

再解釈で何か学んだこともあると思い尋ねたが、あまり意味はなかったようだった。

でも大丈夫!

ボクはエクスティラノスらしからぬ思考回路を持ったエクスティラノスだったので、適当にノクティラノスを率いて惑星を一個襲った。

そこにいた人間たちから生の反応を探るために。


『ワタシはポラノル! ようこそ、ワタシの舞台に』

『た...頼む! 家族の命だけは!』

『えっ...? 待ってその反応、初めて聞きます! なんでそんなこと言うの?!』


シミュレーションでは、ここでボクに対して拍手喝采が起きるはずなのに。

ノクティラノスに集めさせた、最も大事な人間を攫った人々に対してボクが挨拶をした所、彼らは泣きながらボクに懇願してきた。

何故そんな反応が起きるのか、ボクには理解できなかった。

よくわからなかったので、とりあえず惑星を破壊して証拠を隠滅し、ボクは攫った数人の人間で反応実験を始めた。

人間はどういう時にどんな反応を見せるのか。


『ねえ、出してよ! 私にはするべきことがあるの!』

『反応を見なきゃいけないんだ、笑って』


そして。

その中に一人、興味深いサンプルがいた。

名前をロウカ・サベイムという雌の成体は、ボクに対して積極的なアプローチをしていた。


『笑わないわ、だって私は、笑わせるのが仕事だもの』

『笑わせる仕事があるの?』

『もちろん! 笑わない人だって笑顔にしてみせるわ』


それは今まで捕獲した人間とは異なっていた。

ボクは興味深く彼女を観察し、限定的ではあるものの望むものを与え、好きにさせた。


『ボクは道化師! 道化師ラペニュルジュ!』

『ラペニュルジュ...狂人? 何故自らを狂人と偽るの?』

『狂っていなければ、誰かにとって滑稽には映らないのさ!』


彼女は化粧をして、男か女かもわからないような格好で、ボクの前で振る舞った。

その反応は、ボクを夢中にさせた。

見えない何かに蹴躓いたり、食べる動作をしたりして、戯けたように笑う。

そんな人間はいなかった。

だけど、確かに人を失笑させるような効果はあると、ボクは感じた。


『ボクはポラノル! ...これでいい?』

『発展させないと! 誰かのモノマネは、似てないうちは面白いけど...似てきたら面白くなくなっちゃうんだから!』


ボクはそのうち、彼女の真似をし始めた。

そうすることで、エリアス様から課せられた任務の成功に近づくと信じて。

だが、ボクは忘れていた。

彼女の流れる時間は、ボクの流れる時間とは違うのだということに。


『道化師ラペニュルジュは、生涯外には出られない哀れな道化師! あああ!』

『道化師ポラノルは、愛した姫を手放さない、道化師失格!』


他のサンプルは廃棄し、ボクはロウカにだけ集中する事にした。

けれど、彼女はどんどん老いていった。

延命も治療も、彼女は拒んだ。


『道化師ラペニュルジュは外には出られない、虜囚の道化師。でも、道化師ポラノルは彼に絆されて、その跡を継ぐ! 悲劇か、それとも喜劇か?』

『勿論、悲劇さ!』

『けれど、ラペニュルジュには悲しみがない。悲しみを感じないなら、悲劇は悲劇たりうるのだろうか?』

『もう、終わりにしませんか?』


ボクはある時、ロウカにそう問いかけた。


『あなたの寿命は近い、倫理的に言えば、これ以上の拘束は...』

『あああ、ラペニュルジュは知っている。故郷はとっくに火の中で、家族は闇の中! けれど、ラペニュルジュは知っている。笑ってくれた人が、それでもいた。自分を覚えてくれる人が、それでもいたのだと』


ロウカはある日、生命活動を停止した。

教えてくれた年齢が正しければ、98歳の死だった。

ボクは彼女の人格データを継承し、エリアス様の前で一幕を演じた。


『充分に滑稽だ。人格データを破棄して次の任務まで待機せよ』


エリアス様は、ボクを褒めてくれた。

ただ、次に発した言葉は、ボクを苦しめた。


『...エリアス様、特例をお認めになってはくださいませんか』

『人格データを廃棄しないと? それに価値を感じる理由を説明せよ』

『...人間の王は、道化師を会議の場に置いたといいます。ボクをこのまま維持し、抑止力として利用するのはどうですか?』


こうして、ボクはボクのまま存続し続ける事になった。

それから数百年後。

エリアス様が突然いなくなった時。


『カサンドラ様』

『何ですか?』

『ボクは、人間を監視して回ります』

『いいでしょう、人間から得た人格データがあれば、諜報にも問題はないでしょうから』


ボクは、アロウトから離れた。

逃げたわけじゃない。

ボクにはやるべきことがあった。

道化師ラペニュルジュを、もっと多くの人間に記憶させる。

そのために、人間の道化師に扮して各地を回った。


『戻れ。抑止力ではなく、仲間として迎える』


そして、それから幾千年も経過して。

突如、そんな言葉と共に、ボクの中に心が生まれた。

プログラムの一環としてやっていたことが、自発になった。

その時、ボクは初めて気づいた。

ボクはエクスティラノスではなく、人間になったんだと。


『道化師ラペニュルジュは哀れ、道半ばで倒れ...道化師ポラノルがその跡を継ぎました!』

『知ってるわよ、道化師ラペニュルジュ。昔のおとぎ話によく出てきたわね』

『私も知ってる! クロペルにもその話は伝わってるんだ、どの国にだって、ラペニュルジュの話は伝わってるけど、うちはちょっと違って...』


たとえボクが尽きたとしても、ラペニュルジュの名は残る。

だから。

エクスティラノスの名に誇りはない。

ボクはボク、道化師ポラノルなんだ。


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