234-組み立て工場
というわけで、僕は設計図を抱え、工場部へ向かう。
時間流の流れを意図的に制御している特殊空間であり、その入場は通常手段では困難だ。
通常空間の時間の流れと、より速く流れる内部の時間流の間で引き裂かれる....そうだ。
「プレジアナのトンネルを潜らないと入れないんだよな」
時間流を調整する入り口、プレジアナのトンネルを通過する。
その先は、広大な工場内部に繋がっている。
「エリアス様! 何の御用事ですか?」
「エリアランツェに載せてほしい装備がある、最下層へ案内してくれ」
「了解!」
駆け寄ってきたタッティラに頼み、最下層へと向かう。
円周状になっている工場は、第一層には何もないが、中央の昇降機を使って降りれば、各層にて生産中のルナティラノスを見ることができる。
「一層降るごとに時間が速く流れます!」
「成程な」
最終加工を行っているのが浅層、組み立てを行っているのが中層、下層では部品の生産が行われており、最下層には――――
「ここが最下層、エリアス様は二回目ですよね!」
「ああ」
当時はまだ、エリガードの安置という名目でしか使われていなかった場所だ。
昇降機が下層の最下部を抜け、しばらく空白地帯を昇降機は降りる。
そして....
「これが....指揮官機か」
「はい! 全部で十二機です!」
昇降機が一度停止する。
僕が周囲を見渡すと、最終調整中の十二隻のエクスティラノス専用艦が固定されていた。
どれも、今まで代わり映えのなかった艦艇と違い、それぞれの役割に特化した特殊な外見になっている。
「最下層はまだなのか?」
「はい、これより下降します」
昇降機が再度鳴動し、僕らは更に下部へと降りていく。
「ここが最下層......エリアランツェ開発区域です」
昇降機が、床のくぼみにぴったりと嵌る形で停止する。
四方には、エリアランツェ専用の装備が組み立て中の状態で置かれている。
「ここは......そうか、地上の1秒が1か月にあたる速度か」
「はい」
道理で、こんなに悠長な組み立てをやっているわけだ。
僕は、そこで初めて設計図データをコンピューターに送った。
「これは.....キネス兵器? 初めて聞きます」
「質問は許可しない、これを設計図通りに組み立て、事前シミュレーションにより干渉を計算、組み立て時に適切な配置を行え」
「....分かりました」
これで、エリアランツェへのキネス兵器装備を完了させた。
ニトとあの後話して、相手が使ってきたあの消滅兵装はキネス兵器である事が分かった。
属性は不明だが、僕の装備があれば対策は出来る。
「完成が楽しみだ、頑張れ」
「はい!」
僕はそういうと、仮組みのエリアランツェを見た。
まだ骨格だけだが、全体の形状は何となく掴める。
「確か、ジークエクスティラノスの変形機構を移植するんだったな」
「はい」
エリアランツェ仮組みの真上から、ジークエクスティラノスの完成品が出てくる。
前のジークエクスティラノスは損傷が酷かったので、作り直したそうだ。
作り直してから移植するとは、贅沢なものだが.....
「エリアランツェの装備は新開発の構造を使用してますから、可変機能の潤滑性は非常に高いんですよ」
「そうなのか」
「はい」
そこまで言うなら期待はしておこう。
僕は頷き、昇降機の方を向く。
「もう行かれるのですか?」
「....ああ」
「お任せください、必ずあなた様の宝物を守る兵士を、軍隊を完成させて見せますから」
「勿論だ、そうでなければ――――」
お前の存在意義はない。
その言葉を、僕は口に出すのを憚った。
「....そうでなければ、他の誰にも出来はしない、そうだろう?」
「はい! お任せ下さい! このタッティラ=エクスティラノスに!」
表情は見えない。
だが、タッティラの笑い声が背後から響いた。
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