225-帰還
『その答えに、嘘はないと信じましょう』
僕は返答を返し、彼女は頷いた。
すると彼女の体が消えていく。
「消えるのか?」
『いいえ。もとより、原初の世界...「花畑」の住民は偽りの体という器に棲まう霊体のようなモノ。好きなように形を変え、何か親和性の高いものに宿る事もできます』
「そうか」
終わりはないのか?
そう問おうとした僕は、それは欺瞞だと気付く。
僕自身も、終わりのない存在だからだ。
終わりのない存在が、終わりを告げるときは自ら終わりを選択した時。
彼女に罪の意識はあれど、終わるつもりはないのだろう。
こうして、過去の連鎖に今を生きる者たちが触れる前に現れるために。
「貰っていく」
僕はモノリスのような媒体に触れた。
『愚かなる蛮族に制裁を下す者に この技術は力を貸すだろう マグノリア・ディース』
そんな文言が表示されたのち、触れた場所の下部が開いてラックのようなものが姿を現した。
そこには六つの少し厚みのあるカードが収められており、プッシュ・イジェクト機構を持っているようで押し込めば飛び出してきた。
「間違ってはいないな、悪いが借りるぞ、マグノリア」
愚かなる蛮族を滅ぼすために使うのは変わりない。
僕は六つのカード全てを取り出すと、それをそれぞれ触手で持つ。
そして、遺跡を後にする。
水から上がり、機械に話しかけた。
「戻りたい」
その言葉通りに、僕は地上へと戻ってきていた。
背後を振り返れば、星空雪車が見えた。
僕は砂に足跡を残しながら、雪車へと戻る。
「これは.......凄いな」
僕は呟く。
六つのカードに分けられていたが、内容は三つのカードが本体であり、もう三枚はそのバックアップだった。
この宇宙全体の地図や、惑星の詳細など、本来調べようがない情報。
デフォンが持っていなかった分の兵器のデータなど。
そして、その前提となる膨大な知識データがそこに収められていた。
Ve’zが辿り着けなかった高みは、異常な存在という特異点によって生み出されていたのだ。
「だが、それを実現する時間はないな」
せっかく入手したデータだが、コレを実用化する技術を確立するためには既存のスキルツリーとの
技術ツリーを伸ばす時間はない。
すでに計画は始まっているからだ。
星空雪車が既知領域に辿り着くまであと三日、その後は絶え間ない防衛戦である。
比較的理論が実証されているものは利用できるだろうが......
「だが、問題はない」
何故なら、Ve‘zは禁忌技術を開放した。
こんなものが無くても勝つことは容易だ。
連邦がどんなに強くとも、アレが起動して仕舞えば全ては終わる。
最終手段ではあるものの、勝利を目的にするのであれば...だが。
「今頃はプロクレードか」
僕は呟く。
プロクレード星系にて、最後の防衛戦が行われる。
現在量産中のロットではない、ファイナルナンバーを用いた物量作戦だ。
全ては敵を誘い出すための一手。
だが、敵も馬鹿ではないと今までの戦いから気付いている。
だからこそ、次の戦いはより緻密で、慎重なものになるのだ。
「そうなると、帰還ルートは........コジャスラの放棄ゲートを再利用するか」
プロクレード星系のあるラジュリアナコンステレーションとは反対に位置するバザリアッグコンステレーションに存在するコジャスラ星系。
そこには今は使われていないヴェリアノス行きのゲートが隠されている。
本来はヴェリアノスに”行く”ためではなくヴェリアノスから”逃げる”ためのゲートだが......
「逃げる必要はない、僕たちは」
『私たちは――――』
「『エリアス・アルティノスなのだから』」
僕とエリアスの言葉が交差する。
星空雪車が加速し、再ワープへと入る。
帰ろう、ヴェリアノスへ、アロウトへ。
決戦の地へ。
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