219-解き放たれた禁忌
『これより我々は、”禁忌”技術と、”禁忌”領域の戦力強化を承認します』
全員が集う会議で、カサンドラはそう宣言した。
それは、全てのエクスティラノスに対して大きな影響を齎す。
Ve’zのエクスティラノスにおける”禁忌”とは、二つの意味を持つ。
まず一つ。
”本来不要であり、使用するべきでないとされる過剰な技術”を指す”禁忌”。
次に、
”どのような副作用を齎すかが解明されており、それにより使用が禁止されている”ものを指す”禁忌”。
これは、全員に対して行動指針を示したに等しい。
メッティーラ、ケルビス、ジェネラス、アドラス、ポラノル、ケイトリン、シュマル、ナルのような戦闘組にとっては、禁忌技術を応用した戦闘を想定する必要がある事を。
シーシャ、グレゴルのような情報管理組は、情報の出し入れの活発化を。
タッティラは禁忌技術の製造を。
それぞれ胸の内に覚悟したのだ。
『まさか、このような日が来るとは』
『ですが、同時に覚悟しなければいけません。先代のアルティノス様たちが封じてきた数々を、白日の下にさらす事による代償を――――』
『それを、エリアス様に支払わせるわけにはいかない。我々が支払わなければ』
シーシャ=バスディラノスの重々しい忠告に対し、グレゴル=エクスティラノスはそう返した。
本来、シーシャもグレゴルも――――戦闘を行うエクスティラノスではなく。
管理する存在なのだ。
グレゴルは先代に、シーシャはエリアスに。
それぞれ生み出されたのだ。
彼らが抱える重荷は、忠誠によって支えられている。
彼らは、アルティノスの守護者であり、歴史の保護者なのだ。
過ちは繰り返されてはならないのだ。
『(禁忌技術を)満載してくれないか?』
『無理だね、パワーリソースが足りなさすぎる』
『超圧縮恒星機関を増設すればいいだろう?』
『そんなスペースも、冷却装置もないんだけど....』
『だったら拡張してくれたまえよ』
その頃。
ケルビスはタッティラと問答していた。
実を言うとケルビスは事前に準備をしており、タッティラにこうして相談しているという訳である。
『ムチャ言わないでよ、ケルビス。今のジークエクスティラノスだって、改良に改良を重ねて.....』
『変形機構はエリアランツェに移植すればいい、余計なスペースに武装を全部突っ込んでくれたまえ』
『....分かった、その代わり機動性は落ちるよ』
『もともとあってないようなものだっただろう』
『言うね、君も』
タッティラの工房は、禁忌技術である時間操作により、外での一時間で工房内での一か月が経過するという恐るべき速度で製造が進められていた。
今までに溜め込まれた資材をグレゴルが全て解放し、それを使っての製造である。
『全く、技術考証も丁寧に進めてくれちゃって。お陰で検証をほとんどせずに組み込めるよ』
『もともとは兵器の為に作られたものではないんだけど.....』
『分かっているさ』
タッティラは、ケルビスを見上げて笑いかけた。
ケルビスはそれに対して、目が笑っていない最大限の笑みで返した。
『禁忌技術の応用により、我々はワームホールジェネレーターによる移動ではなく、位相置換技術による自在な転移が可能になります』
『本当ですか!?』
その頃。
カサンドラとメッティーラが会話していた。
禁忌技術の、現在明かすことのできる範囲での作戦変化の情報共有である。
『ただし、それに必要な装備は従来通りエクスティラノスにのみの搭載となります。十分な演算領域を持たないノクティラノスに装備させた場合、未知数の位相空間異常を引き起こす可能性がありますので』
『分かりました、その他は?』
『現在余剰生産分のノクティラノスやラエリス等を全て廃棄、リサイクルして新たなティラノス――――ルナティラノスの生産に回します』
『防衛戦力はどうなさるおつもりですか?』
メッティーラはもっともな疑問を口にする。
ノクティラノスをすべて排除してしまっては、敵に奥深くまで入り込まれてしまう。
それに対し、カサンドラは――――
『先日、エリアス様とお話しされた際にですね....あの方は”敵は一点突破を仕掛けてくる”という可能性がある事を口にされたのですよ。それはつまり、兵站を無視した大攻勢――――我々はここを餌にし、ルナティラノスによる包囲戦を仕掛けます』
『それは......!』
それは即ち、アロウトに侵略者が土足で踏み入ることを許容するという事。
メッティーラは口を開きかけたものの、カサンドラはそれを一蹴するように言った。
『敵は総戦力を集結させています。となれば、包囲戦を仕掛けるなら今。ですが、敵がラベクの門から離れなければ、あの門は破壊できません。あの門さえ破壊してしまえば、後は如何様にでも殲滅できるのです』
『エリアス様に許可などは.....』
『私は全権を任されています、今こそあの御方の試練に挑む時ではありませんか?』
慄くメッティーラに対し、カサンドラは堂々と言い切った。
それはエクスティラノスだからではなく。
アロウトをこの瞬間まで守り切ってきた自分の矜持であった。
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