216-旅程
「ここもダメだったか」
僕は呟く。
航行計画を調整しつつ、最寄りの星系にある生存可能な艦橋を備えた惑星を当たって見たが.....とうとう最後まで巡ってみたものの駄目だった。
最後の惑星に至っては、地球並みの文明が育ってしまっていた。
既に人工衛星を浮かべるほどの文明が育ってしまっていたため、ここに移住するのは不可能だ。
「懐かしいな.....」
ほんの二年ほど前まで、僕もこの星の人々と同じ常識の中で生きていた。
世界を変える気もなく、世界を変える力もなかった。
無数にいる「人間」の中にいる「人間」でしかなく、誰も僕を気に留めることはなかった。
「不思議なものだ」
本来なら、衛星軌道上にこうして浮かんでいることは、領空侵犯である。
だが、この星にはそれに気づく技術がないのだ。
住まう人々は、相変わらず重力に縛られ、未だ空に足を踏み出す手段を知らない。
「それを愚かだとは思わないが....」
思えば、遠くまで来たものだ。
僕も、Ve’zも。
Ve’zの始まりもまた、落ちてきたゴミから技術を得た結果の繁栄なのだから。
その繁栄は、同じく生物としての限界によって終わった。
「結局、人間とはどこに向かうんだろうか」
人間を使役することで停滞したエミド。
人間を越えることで滅亡したVe’z。
「神」を作った事で何かが起きて滅んだアルケーシア。
人に許された領域を超えた実験を行って消滅したラー・ゼソル。
人は、何のために生きるのだろう。
滅ぶために生き続けるのが人間なのだろうか?
「人は不完全、か」
生命について何も理解していない、地球人が考え出した結論だが――――
それでも僕は、この答えを真理だと思った。
人が人である以上、不完全なのだ。
その進化や繁栄の先には、破滅以外の道はない。
氷がいつか融けて水になるように。
「.....行くか」
僕は星空雪車を加速させる。
一気に速度を上げた星空雪車は、惑星を離れ目的地へ向けて移動を開始する。
二回の連続ワープを行うためのエネルギーは、後五時間ほどで回復するはずだ。
数時間後。
星空雪車はワープ空間の内部にいた。
僕は暇な時間中に、星空雪車の保全作業を行う。
自己修復機能があるとはいえ、かなり無茶な行軍を行なっている。
僕は通常の人間と違い、休息をほとんど必要としないために、星空雪車は連続ワープを繰り返している。
船体に負荷がかかっているかもしれないし、エンジンやスラスターに問題があるかもしれない。
幸いにも、船体や推進にはほとんど問題がなかった。
「やはり、この船はラー・ゼソル由来か...?」
思えば、この船が保管されていた惑星の技術レベルと、この船は大きくかけ離れているように思えた。
これほどの船を作れる文明が、Ve‘zの侵略に対して何も出来なかったとは思えない。
「見てみるか...」
ブラックボックス化している部分の、不明な刻印をスキャンして見る。
すると、あの中央星系の幾何学模様のようなマークと、ラー・ゼソル主要言語で『アンジュペル旅行会社』の文字が見えた。
「観光船だったのか...」
僕は呟く。
ただの観光船でこのレベルとは...戦闘艦など、想像するだけで恐ろしい。
Ve’zどころか、連邦ですら勝てないだろう。
いや、そもそも争う前提で話を進めるだろうか。
エクスティラノス達は、勝てない戦いはしないだろうと僕は信じている。
命を軽んじていても、損失の方が大きくなるのであれば最善手を打つだろう。
考えていても仕方ない。
一刻も早くオマケを持ち帰り、生存可能な惑星を見つけてアロウトに帰還しなくては。
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