214-だが連邦艦隊に絡まれ――敗北
射程距離内に出現したミドガルズオルムだったが、対処しようとしてもVe‘z側には余力のない状態であった。
ラベクの門から増援を呼ぶために、周囲の重力異常を排除する必要がある。
Ve’zの全ての艦は、フレンドリーファイアを防止するためにターゲットが出来ないようにされている。
この状況で、それを為せるのは。
『プリズマティック、発射する!』
ケルビスが急制動の後に反転。
攻撃モードへと変形して、超兵器を放った。
拡散するレーザーは、ラベクの門へと直撃する。
それで門は破壊されず、重力異常の原因だったプローブを粉砕する。
直後、ラベクの門が起動し、エクスタミネーターノクティラノス25隻の艦隊が送り込まれる。
『ここは任せる!』
ケルビスは推進モードへと機体を切り替えつつ飛び出し、エクスタミネーターノクティラノス艦隊と合流。
そのまま短距離ワープで、ミドガルズオルム艦隊の前へと飛び込んだ。
『全艦、攻撃開始!』
逆V字の編隊へと再編成したケルビス艦隊は、一斉に超兵器を連射してミドガルズオルムに攻撃を加える。
だが、無意味である。
ニューエンドはシールドを貫通せず、ミドガルズオルムはただそこに在るだけであった。
続けて、第二射。
それが到達する頃には、ミドガルズオルムからの艦砲射撃が艦隊に襲い掛かった。
『まだ....まだ耐えれる筈だ!』
口径だけでジークエクスティラノスを超える艦砲が、超精度の射撃で襲い掛かるのである。
シールドによる傾斜で防げなかったノクティラノスは、装甲で一度だけ耐えたものの、融解した断面部の爆発によってバランスを崩し、ニューエンドは空を切った。
『第二次救援、送ります!』
ラベクの門が再起動し、今度は五十隻のエクスターミネーターノクティラノスがジャンプアウトする。
それらは即座にケルビスの元へと送られ、ニューエンドを充填、即射撃する。
ミドガルズオルムは総計七十隻のニューエンドの集中砲火を浴びながらも毅然としてそこに在り、砲撃で再び五隻を落とした。
『なんて頑丈なシールドだッ!』
『敵はエミドの技術をリバースエンジニアリングしたのでしょう』
『成程...私たちにとっては天敵のようなモノか』
ケルビスは歯噛みする。
シールドに攻撃が通らないのであれば、どう動けばいいかは自ずと分かる。
『アドラス!』
『うん!』
アドラスが突出し、アビサルゲートを発動する。
シールドごと重力場で飲み込み、押し潰そうという魂胆である。
だが。
『質量が大き過ぎる...私じゃ無理かも!』
『それ程か...』
アビサルゲートの重力場の想定質量を、ミドガルズオルム三隻が優に上回っているのである。
仕方なく、アドラスはミドガルズオルム一隻を狙い、再度重力場を展開する。
元々ニューエンドによってシールドが減衰していた一隻は、一瞬で内側から飲み込まれ、圧壊した後に誘爆を起こして吹き飛んだ。
『一時撤退を具申します』
『.....の、ようだね』
ケルビスは苦々しく呟く。
ミドガルズオルムを一隻落としたものの、彼等の背後ではポラノル達が劣勢を強いられていた。
ラベクの門を破壊しようにも、自壊はエリアスの直接コードでなければ不可能であるし、破壊は堅牢なシールドによる守りで現実的ではない。
ここは一時撤退するべきだと、カサンドラは提案したのだ。
背水の陣で包囲戦を受けるのは、Ve’zの戦闘のやり方ではない。
『ブリッジヘッドが複数要る、一時撤退するべきだ』
『.....分かった』
連邦の技術力は、Ve’zの想定しているものを遥かに上回っていた。
この世界の水準に合わせられたエクスティラノス傘下の戦力では、あまりに力不足である。
アドラスがいればミドガルズオルムを一隻墜とせるが、このままだと包囲される羽目になる。
そうなれば、寡兵で耐えられるかは分からない。
その未来を読んだうえでのケルビスの判断である。
『全艦、ワームホールに入り込め!』
エクスティラノスに搭載されたワームホールジェネレーターにより、Ve’z戦力は即時撤退を開始する。
アドラスとケルビスもまた、ノクティラノスを隠れ蓑にその場より撤退した。
こうして。
ガイレン星系は一時的に連邦の制圧下に置かれ、Ve’zはラベクの門の制御を失ったのであった。
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