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【完結】SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~  作者: 黴男
終章(1/3)-『探求』編

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211-終わりを招く過ち

『我々は共感の中で高め合い、ついに世界の法則に干渉する術を見つけ出しました。あなた方の言語ふうに言えば...“魔法”です』

「...魔法」


重々しく口を開いたデフォンの出した単語は、あまりにも身近で...そして不気味さを覚えるほどの、単語だった。

限界まで発達した科学は魔法と変わらない...とでも言いたいのだろうか?


『世界の法則とは、全てが均整が取れるように動いている歯車のようなものです。その歯車の組み合わせに手を突っ込むというのは、とても危険な行為でした』

『だが、やめなかったんだな?』

『はい。何人かが、法則に逆らった代償を受け消え去りましたが、彼ら彼女らの遺志を受け取った私たちは、愚かにも研究を続けました』


人口がどれくらいいたかは分からないが、意識だけとなった人間が一つの脳として動けば、1秒にして数億年の考証を重ねられるだろう。

そうして彼ら彼女らは、ついにとある過ちに辿り着く。


『そして...この世界の他にも、世界があることに気づいてしまったのです』

『気付いたからどう、という問題ではないような気がするが?』

『先ほども言った通り、この世界というのは、この世界だけで均整が取れる最低限のエントロピーで稼働しています。イレギュラーが起これば、自然と宇宙の熱的終焉は早まるのです』


ということは、それに類する何かが起きたということだろうか?

僕は考えるが、すぐに辞めた。

元地球人で、エリアスと一体になった程度の僕では...考えることもできない事象だ。


『我々は異世界へ侵攻すべく、その門を構築する努力をしました。...これが決定的な過ちだと気付かずに』

『...何が起きた?』

『簡単なことです、世界の『外』は虚無ですから。世界を守っていた『殻』に穴を開けてしまった我々は、その流出を抑える手段を知らない無知な赤子でしかありませんでした』


つまり、世界を構成するエントロピーを流出するのを防ぐために存在していた「壁」に、異世界へ旅するために開けた「門」という名の穴が空いてしまい、エントロピーの流出が始まったのだろう。


『穴を開けた我々の本国は、瞬く間に壊滅しました。実験を行っていた研究者の殆どは一瞬で虚無に吸い出され、もはや追跡することはできません』

『君は何故?』

『私は事故が起こる事を予見していました。......あなたには分からないと思いますが、人間というのはどのような形になっても...“虫の知らせ”というものを信じてしまうのですよ』


彼女は事故が起きる事を事前に予測。

船とアーカイブを用意し、急いで逃げたのだという。


『しかし...それだと、今頃この宇宙は滅んでいることになると思うが?』

『それは分かりません。ただ、こちらの観測機器によれば、この世界は我々の文明が消え去ってから暫くして、外側に「壁」ができた事でエントロピーの循環がなんとか再開され、持ち直しました』

『それは...よかったのか?』

『本来起こり得ない事象です。そして、この世界のエントロピーは現在異常値です。外部からエントロピーを取り込んでいるようにも思えます』

『それがどういう結末を引き起こす?』

『分かりません、ですから、託すのです。我々のこの技術を継承すれば、あなた方は幸福にも、神にもなれる筈。賢く使うという選択肢を取れるのであれば、我々が贖うことになった、建国以前の虐殺の数々を繰り返さなくともよくなる』


だが、僕にはどうにも、そうは思えない事があった。

人は分かり合えても、手を携える事ができるとは限らない。

それは、感情を捨てたVe’z人だけができる事だ。

感情という足枷に縛られ、人の意思の中で荒波に揉まれる人たちを虐殺しなければ、完璧に分かり合える社会など作れるはずがない。

事実、彼ら彼女らが『地を這う人々』と揶揄した人達は、分かり合えなかった人達だ。

それから目を背けることはできない。

僕の考えを共感したのか、彼女は静かに目を閉じる。


『...そうですね、分かっています。ですが...精神だけになったとしても、人の本質は何も変わりません。嫌なことから目を逸らせるのであれば、逸らすのです』

『...』

『さあ、核を破壊してください。あなたの目の前に、アーカイブがあります。その奥に、核が』


目を閉じて、再び開けると、僕はビジョンの世界から戻ってきていた。

眼前の制御盤の上には、Ve‘zの使う記憶媒体そっくりのものがあった。

アクセスしてみると、記録容量が桁違いに多かった。

僕の記憶から作った複製品だろう。


『...ここの人間はこの船を信仰しているが、君が死ぬとこの船は止まるのか?』

『...いいえ、それはありません。いかなる状況であっても、この船のシステムは独立して動きます。私が死んでも、ここから動くことは、決して』

『分かった』


僕はもう考えなかった。

触手が飛び出て、核を一瞬で破壊する。


『アー...イブに......まけを......おき...た...その...標...へ』


アーカイブにおまけを付けておきました、その座標へ。

そう言い残し、彼女は長い旅に終わりを告げた。

僕は触手を収納し、テレポートする準備を整えた。

謎は解けた。

あとは、彼女の言う「おまけ」を回収する時だ。


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