209-遺跡の正体
翌朝、日が昇る頃。
僕は信号の発信地点に向けて出発した。
村からも少し距離がある、小高い丘の裏側あたりから発信されているようで、僕は夜明けの風が吹き抜ける草原を一人歩く。
「まったく...丁度いいスペースがあるように見えるんだが...なんでここに着陸しないんだ...?」
僕は疑いを持つ。
星空雪車のオート着陸設定で、信号の発信地点から離れた場所に着陸したものの...
昨日、星空雪車を呼び戻してみたところ、着陸してくれなかったのだ。
回収はできるようなので、色々と試してみたが...どうやら信号の発信地点から半径26kmの円周範囲に着陸できないようだ。
ここに何かある。
僕でなくても、気付いたはずだ。
しょうがないので、星空雪車は上空に待機させたままにしている。
もしこの星の何処かに航空戦力があれば、シールドがある間に回収されなければ救援を呼ぶ羽目になるな...
「しかし...ここに、何があった?」
信号の発信地点は遺跡、それも空から落ちてきたという。
ここに着陸できなかったのは、ここが都市だからなのか?
いや、異常な金属反応は観測されなかった。
それに、空から落ちてきたという事象が口伝で残っている以上、ここにあった『何か』が滅んだのは、遺跡が落ちてくるより前の事という事になる。
「考えても無駄か...」
僕は斜面を登る。
唐突に自然が途切れ、生気のない赤土が斜面を覆っていた。
そこを苦労して登った後、村人が使うものであろう通路を見つけてへこんだのは内緒だ。
裏側に回り込んだ僕は、岩盤が迫り出すようにして視界を塞いでいるのを見た。
どうやら、裏側に回った後、更に降りないといけないようだ。
下は崖になっており、下からも上からも見えにくい場所にそれはあった。
「これが...!」
遺跡。
僕はそれを見て、確信した。
こいつはコロニーやステーションのような構造物なんかではない、宇宙船だ、と。
墜ちた後も、ほとんど損傷がない。
内部に侵入できる経路が露出していないため、僕は入口を探す。
入り口はすぐに見つかった。
「...死者の、門...終わりなき、終わりを探求する者だけが...この扉を開くであろう...か?」
それは、船の下部にあたる部分の、蝶番が壊れて開いたハッチの中にあった。
すぐ側には、まだ新しい青い顔料で、そう書かれていた。
この場所は、本当に彼等の信仰の地のようだ。
「ならば、破壊するのはやめておくか」
内部のシステムが生きていればいいが。
僕は制御盤に手を翳し、内部のシステムに思考接続してハッキングを試みる。
「...弾かれた、だと?」
あり得ない事が起きた。
思考接続が、弾かれた。
Ve‘zだけが突出した技術の筈のそれが、いとも容易く阻まれた。
この船、ただの文明の残骸ではない。
いや先からやってきた、遥かなる時代の遺産なのだ。
そして、その遥かなる時代は...Ve’zなど、小国以下の技術力だったのだろう。
「なっ、開いた!?」
どうやって入ろうかと思案していた僕だったが、唐突に扉が開いた。
内部の照明は生きているようで、その先には通路が見えていた。
「行くしかないか...」
怪物の口の中へ飛び込むような面持ちで、僕は船の中に足を踏み入れた。
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