206-苦戦
一方、その頃。
Noa-Tun連邦は順調に戦線を拡大し、バーレンクドル星系へと攻め入っていた。
この星系自体に戦略的価値はないものの、隣接するガイレン星系には中央星系へのショートカット手段である「ラベクの門」が存在している。
無論、停止させているものの...連邦がその存在を嗅ぎつければ、今まで停止したゲートが復旧したように、中央星系への道が開かれてしまうと、カサンドラは判断していた。
『これは遅滞戦術の一環です、Ve‘zの名に泥を塗るような戦闘も已むなしです、理解しましたか?』
『はーい!』
『分かったよ、フフ』
『了解した』
この戦いに参加するのは、アドラス、ポラノル、グレゴルである。
それぞれ、ロイヤリティイミティラノスを50隻ずつ付帯している。
なぜこの組み合わせになったかといえば、遅滞戦術における有効性がこの三人の乗艦にあるためである。
『では、手筈通りに』
『はいっ!』
ゲート前に展開した前哨艦隊を、アドラスとポラノルが足止めする。
彼女たちの艦もまた、決戦仕様に再度製造されたものとなっており、アドラスの乗るリディーマーエクスティラノスは重力系の装備が再解釈された上で装備されており、ポラノルの乗るシニックエクスティラノスは大量のベネディクトとアナテマを抱えた上で、ハッキング性能が遥かに高くなっており、戦闘型に特化した事でハッキング性能を失ったグレゴルのアドミラルエクスティラノスよりも、撹乱工作には向いているのだ。
『超兵器を使用するよ、アビサルゲート照射!』
直後、連邦艦隊の中央部に強力な重力場が発生し、囚われた艦を空き缶のように潰す。
重力場に囚われた艦は、速度を上げてそれから逃れようとするものの...
『楽しんでくれるといいんだけどね、行くよ!』
ポラノルが、早速といったふうに電子戦装備を起動する。
『スキゾフレニア』と呼ばれるそれは、範囲内の艦船の制御システムに高速言語で干渉し、セーフティが作動して遮断される前に制御を奪う、連邦の高過ぎる対ハッキングに対する効果的な装備であった。
乗っ取られた艦は、まるで餌に集まる魚のように重力場に飛び込み、程なくして全滅した。
それを追うように、ゲートから高機動艦隊が飛び出し、重力場をかわしてポラノルに迫る。
『ボクのショーにようこそ!』
直後、ポラノルは持ち前の高機動性を活かして背後へ退き、搭載しているベネディクト120機と、アナテマ350機を射出。
被弾面積がいくら小さくとも、数十機に張り付かれて撃たれればなす術もなく、連邦の高機動艦隊はその数を減らしていく。
『ねー、私は何をすればいい?』
『後詰めがいる筈さ、気をつけて、見ていて』
『はーい』
そして。
唐突に、それは現れた。
ゲートからでは無く、ポラノル達の背後にワープしてきたのは、連邦の主力艦であった。
全体的に大型なエクスティラノス艦と同じ程の大きさを持つそれは、通常艦船とは比べ物にならないほどの強さを誇る。
だが、この場においては...
『大きい的だね!』
アドラスの攻撃性能と、ポラノルが射出したアナテマの餌食でしかない。
しかし、それは同時に連邦の策でもある。
アドラスとポラノルが主力艦に集中した瞬間、ゲートから戦艦を中心とした艦隊が現れ、挟撃されるような形となった。
『攻撃開始』
だが、戦場にはポラノルとアドラスだけがいる訳ではない。
ロイヤリティイミティラノスが戦艦艦隊を相手取り、ポラノルとアドラスは主力艦を沈めることに尽力する。
程なくして主力艦は、重力場に飲み込まれて引き裂かれた。
だが、それと同時に、アドラスの背後に出現した艦隊が、魚雷を一斉にアドラスへと放った。
『ズルい真似はさせないよ!』
だが、無意味である。
アドラスは重力湾曲砲『アービトレイター』を装備している。
無限に湾曲し軌道を変えることのできるレーザーが魚雷を一掃し、そのまま逃げようとしているフリゲート艦隊を貫き全滅させた。
『それにしても...グレゴル、大丈夫かな...』
『大丈夫さ、彼ならね』
アドラスは、この場にいないグレゴルを心配していた。
連邦艦隊の抜け駆け対策のため、ガイレンゲート前に布陣するグレゴルを。
そしてその心配は、直ぐに無駄なモノだと分かるのであった。
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