204-惑星探査も楽じゃない
プロミアスを旅する僕は、この惑星の目新しい点にいくつか気付いた。
まずは天候。
密林であるにも関わらず、高温多湿という訳ではない。
雨も少なくともこれまでは一度も降らず、時たま雲が見えるものの基本的には快晴である。
次に動植物。
この森林には、先ほどの毛皮の大型生物といい、本来の生態と生息域が噛み合わない生物が住んでいる.....ように見える。
「まあ、仮にそうだったとして、この過酷さはそう変わらないが」
僕は今、岩山を登っている。
上空からは見えなかったが、森は少しずつ傾斜しており、最も低い場所に壁の様に長く聳え立っていたのがこの岩山だった。
触手で岩棚を掴み、僕は少しずつ上に上がる。
「成程、登ろうとする生物は飛行生物の餌食か」
時折襲い掛かってくる大型の鳥を回避しつつ、僕は岩山の天辺にまで到達する。
そこから景色を見下ろせば、森の切れ間が遠くに見えた。
何故そこに着陸しなかったのか、僕にはすぐに分かった。
「一難去ってまた一難…か」
森を過ぎた先には、集落が見えていた。
どうやら、人間…かそれに類する者が、この惑星には生息しているらしい。
僕は岩山を一気に飛び降り、向こう側へ着地する。
「こっち側は沼地ではないのか」
沼地は岩山の壁の向こう側だけで、こちら側には普通の地面が広がっていた。
木々の間をすり抜けるようにして、僕は移動を続ける。
スキャン装備などを持ってきていないのが悔やまれるが、準備不足を悔いる程無価値なこともこの世にはない。
「植生が変わったな」
こちら側は松の木のような、強い風で抉れたような木々が多い。
しかしながら、強風の気配は無く、空気も澱んでいて風の通る気配がない。
「全く、どういう気候でこうなるんだ...?」
僕は疑問を浮かべつつも、ただ進むしかないという事を理解していた。
この惑星について調べる必要は無いからだ。
あの集落の中か、向こう側から発せられている信号――――それの正体を突き止める、それだけでいい。
「とはいえ、この義体で良かったな」
沼地の反対側と違い、こちらの方が湿っていて不快感を感じる空気だ。
もし人間のままだったら、スーツの下は汗でじっとりとしていたと思う。
道も最悪だ、車両で通れるような道ではない。
「もしここを抜けるとすれば、間違いなくパラダイスロストで吹き飛ばしたほうが早いな」
湿り過ぎて、燃やそうにも火が付かないだろう。
しかも、湿った木の皮は刃を通しにくい。
単分子ナイフが必要になるな。
「とはいえ......」
この惑星は綺麗だ。
何者の悪意にも晒されていない。
まるで削る前の宝石のような。
削り磨くことで、人の好む美しさになるとしても――――無垢な輝きは、荒んでいた僕の心に優しく感動を与えていた。
移住先に考えても......いいや、
「まずはあの集落に行ってみなければ」
敵対的な種族かどうか、確かめてからでも悪くはないはずだ。
僕は森の切れ間、そこから漏れる光へと向けて進むのだった。
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