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181-一年が経ち

僕たちがエミドを滅ぼしてから、一年が経った。

この一年の間に、宇宙でも、僕らの中でも、色々な事があった。

まず、各国について。

これまで調停役だったTRINITY.が居なくなり、争いを止めるという発想に至らなかったようで、ジスティカ王国、ヘルティエット王国、キロマイア王国の三国は最終戦争の末自滅、崩壊して離散し、リリー・シノというオルトス王国人が率いる通称連合をトップに据えた新たな国家として再スタートした。

その名を、「フォウルス連合」。

もう僕らに敵対する気もないようで、当分の脅威にはなり得ない。

僕らの方では、ケルビス農園から分けられた植物が他のエクスティラノス達の手によって花を咲かせ、今では収穫量を大きく増やしている。

エネルギーブロックはほぼ消費されなくなり、アロウトの食糧事情は大きく改善した。

そして、一番大きいのが.....


「エリアス、こっち来て!」

「あ、ああ」


僕はエリスに連れられるまま、アロウトの中庭に出た。

そこには、僕に向けて跪くサーシャがいた。


「......正気に戻ったのか?」

「はい」


我ながら酷い言い草だとは思うが、サーシャは我を取り戻したらしい。

僕に跪いたまま、姿勢を変えない。


「それで、どうする気だ?」

「私は貴方に逆らいました、どのようにでも」

「どうする、エリス?」


正直なところ、サーシャの処遇はどうでもいい。

どう処分したところで、ヴァンデッタ帝国が再び脅威になる事はないからだ。

しかし、サーシャは一応エリスのお気に入りだ。

僕の一存で全て決めて仕舞えば、エリスが悲しむ。

それは、悪い事だ。


「ヴァンデッタだけではなく、その他の国もオルトスを除き、殆どが地図から消えたのよ。あなたはもう役目を果たす必要はないわ、サーシャ」


狂っている間の記憶はあったようで、サーシャにとってエリスの言葉は絶対であるように見える。

自分の中身が無いことに気づいて発狂したが、エリスはそこに新たな中身を注ぎ込んだのだろう。

それが芯となり、サーシャは心を取り戻したのだ。


「決めました...私は、お姉さ...エリス様の侍女となります」

「ええ?! い、良いのかしら...」


エリスの身の回りの世話は彼女自身が自分で出来る。

とはいえ、それはサーシャも分かっていることだろう。

彼女があえてそうしたのは、自分を卑下したいからか、媚び諂うためか...

僕には理解できなかったが、しかし...


「侍女なんて...私はそんな価値はないわよ、お友達でいましょう、これまでも、これからも」

「はい...お姉様...!」


サーシャは感極まって泣き出した。

僕はそれを見て、自分は邪魔だと察し、すぐにテレポートでその場から去った。

「お姉さま」は「お姉様」となり、二人はより重い関係になったようだ。

奪われないよう、僕も頑張らなければならない。




他の保護した人間たちにも進展があった。

まず、アディナ。

エミドが滅んだことで、完全に無人になったエミド領域の管理者を僕が命じた。

エリワンステップを含め、エミドのワームホール星系は僕たちが所有し、名称も変えられている。

ただし、バクタラートのみ、アディナのたっての希望で「ジェキドシーク」という名称になっている。


「忠誠心といったものは今の私にはありません。ですが...ジェキドに対する、少しばかりの情けをかけてくださりはしませんでしょうか?」


その言葉に、僕は頷いた。

ジェキドと少しばかり会話したので、どこかにこの愚かな男の名を刻んでおきたかったからだ。

そうして、アディナは、自分が協力した結果迅速に滅んだ国の墓守としての任に就いた。

残されたキシナは、僕が保護しインプラントを除去、現在は惑星フィオにて、無人島で生活させている。

あの変態(ジェキド)は、キシナの人格抑制プロトコルを少しずつ緩めていたようで、現在は質疑応答ができるレベルにまで回復している。

ただ、不要な自我を保持するシステムは無く、引き裂かれたに等しいキシナの自我が戻るのは大分先の事だろう。


「お前はどうする気なのだ?」

「どうしましょうか...」


そして、最後はアルクレイス。

彼女はTRINITY.の情報源として攫ってきたが、僕の罪悪感でここにいる。


「帰りたいなら、記憶を消して戻してやろう」

「すみません、もう私に、帰る場所はありません...」


TRINITY.は瓦解し、彼女の故郷はもう無いらしい。

生活基盤を奪ったのは紛れもない僕なので、個人的に何かしらの補償をしたいところなのだが...


「出来れば、ここでずっとお世話になりたいのですが...役割を終えた人間が、食客として滞在するのもおかしい話ですから」

「別に構わない。Ve‘zは穀潰し等と客を嘲笑するような組織では無いからな」

「それでも、です。エリアス様の慈悲には感謝したいのですが、私はこれでもTRINITY.の端くれですので...」


そう言って、アルクレイスは旅立って行った。

彼女の故郷を焼いた海賊を探しに、カルメナスへと。


「アタシらはクロペルと資産を統合し、合併に応じる事にしたのさ」

「凄いよね、エリアス!」


そして、フォウルス連合国が誕生したのと同時に、クロペルとオルダモンも新たな時代への舵を切った。

資源はあるが、生存に適さない星の多いオルダモン。

鉱物資源はそこそこだが、温暖且つ生存可能な惑星を多く持つクロペル。

この両国は、Ve’zによって戦争が出来なくなったことでお互いを知る努力をするようになり、今までの偏見を捨て一気に融和姿勢となった。

というより、ティニアがオルダモン国民にアイドル的な人気を博したせいで、オルダモン側が傾国したというべきか.....

ともかく両国は資産を統合、二つの全く統治体制の異なる政府を統合し、実質的なトップを新しく交代したイゴール・スファマク主席とし、ティニアは女王として引き続き君臨するらしい。


「元々、クロペル共和国は共和制で、私はこの座に長くいられないからね」


ティニアが女王として生まれながら、共和制の国家を導くことになった理由は、僕はよく知っている。

しかし、それを語る理由はない。

今更掘り返す理由も無いわけだからな。


「よく、そんな思い切った事に振り切れたな」

「元々、前の主席はイワノフ主席の代わりに据えられただけだからさ。文官タイプがアタシらを纏められるわけがないって、そう思ってたんだろうさ」


というわけで、新国家「クロペラ・オルダモア」が誕生したわけだ。

意味は、両国家の単語を合わせたものらしく、「獅子の如き精神」と「永遠の平穏」だそうだ。

一年は過ぎ、そうして.....

激動の時代が終わった。

同時に――――――――僕たちの結末がやってくる。

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