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179-虚ろなる勝利

アラタがその身を犠牲に放った強大な精神波は、アロウトだけではなくその周辺にまで及んだ。

人一人の精神が歪み、引き裂かれ、砕け散る。

その際に生まれる、耐え難い苦痛から生まれる叫びは、増幅され放射され、エミドやVe‘zの使う精神操作の技術を全て破断させた。

その上で、第一・第二・第三船団のエミド兵達は発狂死し、バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスもまた、アロウトと時を同じくして機能を停止した。


『全て...終わったのですね』


エリアスは目を開ける。

アラタの精神は量子の海に消えて、完全に消滅した。

だが、これでエミドは滅び...


『認めるものかっ!!』

『!?』


そのとき。

バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの頂上部分が吹き飛び、一隻のエミド艦が姿を現した。

エリアスは即座にエリガードを再起動し、スキャンを行う。

P.O.Dは損壊しており、体当たりするほかないようだ。


『エミド統合体の歴史は終わらぬ! この宇宙に秩序を齎すのは!』

『...ジェキド・イーシャティブ。あなたはいつも、本当の感情を覆い隠す』

『...そうだとも、この世に存在して初めて、私は愛を知った』

『いいえ、それは正しい感情では無い』


エリアスとジェキドは、その船体が交わる一瞬の間に会話を交わす。

エリガードに突き刺さったジェキドの乗艦から、彼が飛び出してエリアスに襲い掛かる。


「キシナは私が守る、守らなくてはならなぎゃあああっ!?」


身体強化を施されたその肉体も、覚醒したエリアスの前では無意味だ。

あくまで人間としての感情を封じ込めてきただけのジェキドと、最初から機械のように作られたエリアスでは、地盤が違うのだ。


『降伏しなさい。そうすれば、私が全てを引き継いであげましょう』

「貴様...変わった、な...」

『...かも、しれません』


エリアスは目を伏せて呟くが、直ぐにジェキドを見る。


「......降伏、する...キシナは、洗脳が解けて...だが、私は...それが、望みだ...」


ジェキドはエリアスの目を見ながらそう言った。

直後、エリアスはその首を握り潰した。

首だけが、無重力の空間でどこか遠くへと飛んでいった。


『アラタ...』


エリアスは消えてしまった転生者を想う。

勝ったが、彼女にはこの先どうすればいいかわからない。


『...神よ、もし存在するのであれば。私を依代に、アラタをもう一度...』


エリアスは星々に願いを掛けた。

その願いは、遠く、遠く飛んでいき...消えた。




半壊したアロウトから、一隻の船が離脱した。

それは、かつてエリスがこの場所にやって来た時に乗っていた船。

回収され、修復されたこの艦に全員を乗せ、エリスは付近で一番安全な農業惑星へと逃げるつもりなのであった。


「...感じました、ジェキド様は...お亡くなりに」

「勝ったのね」


アディナからそれを聞き、嬉しさの勝るエリスだったが、一分の不安がその心にはあった。

半壊したエリガードと、同じく全壊したアロウトを背に、エリスの船は農業惑星へのゲート向けて飛んでいくのであった。


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