175-バクタラート攻防戦
真の姿を取り戻したバクタラートの首都――――バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスに向け、メッティーラ艦隊は一斉に超兵器を発射する。
だが、それらはバクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの装甲に損傷を与えるどころか、シールドの前で拡散して消滅してしまう。
「....?」
『成程、これはなかなか厄介な特性だね、こちらも攻撃が効かないよ――――これは推測だけど、位相変換型の防御形式だ』
『私とケイトリンで調査したッスけど――――』
『――――互いのシールドコアからエネルギーを共有し合い、ダメージを別のダメージに転移させることで相殺しているようです』
『即ち、同時に破壊しなければならないという事だ』
ジェネラスがそう締める。
そして、それを阻むように船団が複数出てくる。
その構成は、
◇バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドス Vs.メッティーラ艦隊
第一船団
第二船団
第三船団
エミド主力艦艦隊(120隻)
◇ナオ・ラヴェート・イスカ(赤の柱) Vs.ジェネラス艦隊
第四船団
第五船団
第六船団
エミド主力艦艦隊(55隻)
◇ジア・イベンダ・イスカ(金の柱) Vs.ポラノル艦隊
第七船団
第八船団
第九船団
エミド主力艦艦隊(21隻)
◇プロス・ベクト・イスカ(紫の柱) Vs.ケイトリン艦隊
第十四船団
第十五船団
第三十一船団
第三十四船団
エミド主力艦艦隊(20隻)
である。
『全艦散開、まずは敵を減らします』
『突撃陣形を組め、拙者らは敵陣へと飛び込む』
『全艦防御陣形! ボクの人形劇を邪魔させるな』
『全艦左右に広域展開、キルゾーンを回避せよ』
一斉に戦闘が開始され、メッティーラ達はそのまま船同士の距離を取りつつ、バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスとエミド主力艦艦隊から放たれる長射程P.O.Dを躱しながらの機動戦に移行する。
ジェネラス艦隊は一斉に速度を上げ、P.O.Dを躱して艦隊に噛みつき、そのまま内部まで浸透して陣形をばらばらにする。
個人個人がネットワークを通してランダムかつ綿密に動くVe’zと違い、エミドは少しだけ自我を戻した程度であり、今までとは違って「歩調が乱れる」のだ。
そして、自我を中途半端に戻した影響は、ポラノルの艦隊からの干渉にも影響する。
ポラノルはエミド兵を自分を基点とした精神的なネットワークに接続させ、「裏切りのロンド」を躍らせる。
エミド兵は味方を攻撃する艦とそうでない艦に分かれ、味方の指揮系統を混乱させながら自滅していく。
ケイトリンはいつも通り、エナジーバニッシュフィールドを展開して通常艦隊をマヒさせ、ドミネーターノクティラノスの展開したベネディクトによる制圧射撃で仕留めていた。
「ジェキド様、このままでは....第二、第五、第三十一船団に致命的な損失が出ています!」
「フン、やはり歩兵ではどうにもならぬか.....」
その凄まじい戦闘により、エミド側は途端に不利になる。
だが、ジェキドの余裕が崩れることはなく、彼は笑みを湛えた顔で言った。
「しかし、”場”は整った。行くぞ、今こそ、エミド統合体の全力を見せる時である」
ジェキドは席を立つ。
それにキシナは驚く。
ジェキドが席を自分から立つことはほとんどないからだ。
「今より我等は、古来より続くすべての鎖を断ち切る。それは敵も同じである」
直後。
ジェキドの座っていた玉座から、緑光の線が走る。
それは幾何学模様を形成し、壁面に走り全体を埋め尽くした。
直後、シールドを守っていた柱と、バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスから緑色の衝撃波が放たれた。
それはエミド艦隊を通り抜けた直後、Ve’z艦隊にも到達する。
それが何だったのか、それは如実に露になる。
「え.....ど、どこなの!? ここ、だ、誰!?」
キシナの態度が一変し、混乱した様子で倒れ込む。
ジェキドはそれを残念そうな目で見ながら、配下に連絡を取る。
「第一船団、影響はないな?」
『はい、我らは忠誠の元仕えております、これに影響されることはありません』
今の光は何だったのか。
それは、精神同調を強制解除したうえで、精神に掛けられた枷を打ち砕く。
エミドの存在を否定する最終兵器である。
それを受けたVe’z艦隊は、一斉に混乱に陥った。
『エリアス様!? 通信が出来ない....配下を制御できません!』
『これは一体.....分からぬな、しかし戦いの手は止めん!』
『ボクの精神支配が打ち切られた....? 一体何が.....』
『ケイトリン、防御壁の剥離を確認。急速離脱します』
精神支配によって縛られているわけではないVe’z人だが、互いのコネクションを失ったのは事実。
それにより、勢いを増したエミド軍に狩られていく。
エクスティラノス達も戦うが、彼らにできる事は少なかった。
「忠誠こそ最後に頼れるものなのだ、理解せよ――――ブリキの兵隊共よ」
ジェキドはそう独り言ち、笑わなかった。
キシナは彼のもとを去った。
その忠誠が真実のものではなかったからだ。
彼はそれが少しだけ、寂しかった。
「機械知能よ、以前に使用されたトレースを解析せよ。奴らにとどめを刺す」
『承諾。解析を開始します』
ジェキドはその寂しさを打ち消すように笑い、そう命じたのであった。
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