174-バクタラート最終決戦-幕開け
バクタラートの放棄されたゲートが稼働し、そこにVe’z艦隊が一斉にジャンプする。
そして、周囲に敵がいないことを確認する。
『それにしても....ここで何があったのでしょうか?』
メッティーラがふと呟く。
バクタラートは、以前観測されたものとは全く違った様相を呈していた。
ゲートのトレースは星系の外縁部に位置しているため、その様子の異常さが手に取るようにわかる。
まず、全ての惑星が砕け散っていること。
次に、ゲートトレースの周囲には何かの残骸と、焼けこげたような損傷跡のみられるエミド艦の残骸が無数に散らばっていた。
『.....どうやら、ごちゃごちゃ話している時間はないようだね』
直後、全員のスキャンにエミド巡洋艦隊が映る。
エクスティラノス達はそれぞれ指揮するノクティラノスを連れ離脱し、最後にメッティーラが残った。
ドミネーターノクティラノスがベネディクトを展開し、メッティーラと同期させる。
ワープアウトしてきたエミド艦隊を、攻撃準備に入る前に撃墜して回る。
『敵迎撃艦隊の殲滅を確認。これより我々は第三『アゲナ・ラヴェータ』攻撃作戦を開始する』
前哨基地へと向け、メッティーラは艦隊をワープさせた。
そして、遊撃部隊の全滅とスキャン内へのVe’z艦隊の侵入は、すぐにバクタラートの首都に伝わる。
「ジェキド様、敵艦隊が侵入しました」
「なに? どこから来た?」
半ば崩壊した城の中で、ジェキドとキシナが会話を交わしていた。
ジェキドは無事だが、キシナは右腕を義手に付け替えている。
「わかりません、外周部から現れたとしか.....バラスの灯台によって発見し、艦隊を派遣しましたが全滅しました」
「まったく......この復興の最中を狙ってくるとは! 直ぐに展開できる大星國船団を呼び戻せ」
「はい」
キシナは去ろうとするが、その時ジェキドは唐突に目を見開く。
「.....いや、お前はここに残るのだ」
「よろしいのですか?」
「.........分からぬ。しかし、そうでなければならぬと思った。クルーゼに代理を任せる」
「はい」
キシナは端末を操作し、樹木を呼び出す。
現れたのは、褐色と緑がかった銀髪の大男であった。
「お呼びですか」
「敵艦隊を殲滅せよ」
「はい」
クルーゼは去っていく。
彼は第一船団の主であり、首都防衛の責任者。
ツーカーの仲、というわけであり、両者に長い会話は不要だ。
しかし、ジェキドはその感情に疑問を持ったようで、
「これが....信頼というわけなのか?」
と呟く。
キシナはそれを、ただじっと見つめていた――――はずだった。
しかし、その口が開き。
「......間違いない、かと」
そう答えた。
ジェキドはそれに驚き表情を崩すが、直ぐに元に戻る。
「.....そうか、それがお前の答えという訳か」
「はい」
「よかろう」
そして、ジェキドが笑いを浮かべた直後。
首都に衝撃が走る。
シールドを貫通したニューエンドが都市を吹き飛ばし、何万人ものエミド兵を葬った。
それを見たジェキドは、笑いを消して中枢コンピュータに命じる。
「『バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドス――――神代決戦城塞艦』、起動せよ」
直後、都市を分離した城塞が真の姿を起動する。
城を分厚い防壁で取り囲み、まるで睡蓮の花のような城塞へと変形し、バクタの井戸から分離して浮かび上がった。
その城塞は、続けて放たれたニューエンドを完全にシールドで無効化し、超巨大なP.O.DにてVe’z艦隊の右翼を焼き払った。
「......バクタの井戸はあの忌々しい砲台によって崩壊し、我々は苦難を強いられた。だが――――今であれば、自信を持って言えよう、これは通過儀礼だったのだと。古代の遺物共よ、我が安寧の為に死んでくれ」
ジェキド・イーシャティヴが命じると同時に、各地でバクタラートの最終防衛兵器が起動を始めるのであった。
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