163-ジガラスの異変
ワームホールを伝い、ケルビス達はジガラスへと到達する。
そして同時に、ケルビスは違和感を感じ取る。
『.........これは、中々面白い事をしてくれるね.....ノクティラノス隊、パワーコアを切りたまえ』
『ケルビス、何をしている? 何故パワーコアを切っている』
『エリアス様、この宙域には現在、超高密度の増幅物質が満ちています。我々が作った短周波過剰増幅器と同じ原理で、この宙域で長くパワーコアを起動していれば、内部から熱量の過剰増幅で回路が損傷します』
ケルビスは内心、違和感を覚えていた。
この宙域にこの物質が蔓延している状況下で、艦の生産は出来ないはずだ、と。
しかし、エリアスにそれを具申するのは、自らの無能を露呈するとして、ケルビスは次の指令を出す。
『コンバット、アサルトノクティラノスはワープドライブを動力源とし、広範囲に展開せよ。通常火器は使用するな、自動砲台のみの使用に留めよ』
通常火器を使用すれば、一気に増幅されたエネルギーが砲身内で暴発する可能性が高まる。
それを見越し、ケルビスは艦隊をベクタトーヴァにワープさせた。
『ケルビス、敵の状態を報告しろ』
『.......成程、死出の戦力という訳ですか....敵艦総数、1500です』
ベクタトーヴァの周辺には、エミド戦艦を含む大艦隊が存在していた。
そしてケルビスは、敵の旗艦と思われる艦が未発見の新型である事から、即座に情報をアロウトに送信した。
『ケルビス、警戒しろ。敵艦隊の旗艦は大星國船団第四十二船団の旗艦だ、アディナより情報を受け取った。通常艦船と異なり、P.O.Dを五基装備している』
『趣味の悪い事ですね』
ケルビスは余裕の態度を崩さず、自動砲台ダウンレイを数機展開、射撃を開始する。
それと同時に敵艦隊も動き出すが、そのうち何隻かは加速開始と同時に爆散した。
文字通り、死出の者たちなのだ。
そして、ワープドライブによる動力を確保できているケルビス達は、兵装の心配だけしておけばいい。
ケルビスの予想通り、エミド艦の複数機のP.O.Dが内部から火を噴くと同時に、ダウンレイが内部から破裂して分解した。
P.O.Dが破損したエミド艦は、それでも攻撃しようとして姿勢を立て直そうとした結果、味方を巻き込んで自爆した。
『独立兵器以外は使用できません、それに――――ベクタトーヴァ自体も停止しているようです』
『妙だな.....他にベクタトーヴァの存在は確認されていないはずだ』
『はい、妙です』
ケルビスは、とある仮説を思考回路の内部で打ち立てた。
エミドに変化が起き、冷静に自分たちに対して対策を取ってきているという仮説を。
『(いえ、あり得ません)』
エミドという組織が、たった一度の攻撃戦敗北程度で改心することなどない。
そう、ケルビスは考えていた。
このような必死さは、一度でも防衛を突破された者がする足掻きである。
最初から無敵であったエミドが、そんな事をするはずがない。
『ともかく、敵とこちらでは、こちらが若干有利です。エリアス様、パワーコアの対策を施した増援をお願いします』
『ああ。直ちに執り行おう』
ケルビスは、ダウンレイの射撃を――――――後方に向けた。
『コンバットノクティラノスは引き続き敵の船団を相手にしたまえ。アサルトノクティラノスは最優先目標.....つまりは、ベクタトーヴァを攻撃し、破壊せよ』
ケルビス達Ve’zは、艦隊ごと吹き飛んだとて全く問題がない。
であれば、全員を犠牲にしてでもベクタトーヴァを破壊さえしてしまえばエミドには後がなくなり、等価交換が成立する。
放たれたダウンレイからの射撃が、静止したベクタトーヴァの外装を貫通し、融解させる。
融解した部分の熱量が急速に増幅され、破裂して大爆発を引き起こした。
内部に超増幅物質が流入し、そこに続けてレーザー砲撃が貫通する。
弱い一撃が大きな一撃となり、それが連鎖を引き起こしてベクタトーヴァは崩壊を始めた。
『優先ターゲットの崩壊を確認。エリアス様、これより我々は敵の基地へと回頭します』
『把握した、増援をそちらへ送る。合流した後、敵の中央領有基地を叩け』
エミドの管理仕様上、必ずバクタの井戸からのエネルギーを分配して転送し、エミド兵に指示を送るコンピューターのある基地が存在する。
既にケルビス達がスキャンで発見しているそれに向けて、彼らは飛んだ。
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