159-トリニティドメイン最終決戦(後編)
TRINITY.の最終兵器、ワールドアークである「ディーオセブタム」が出撃する。
その巨大さは、まるで小惑星のようではあるが――――しかし、それはまさに最終兵器であった。
何しろ、その存在自体がエミドからのサルベージング技術の塊である。
攻撃されるのは免れない、それほどの覚悟を以てこの船はそこにいた。
『攻撃――――開始』
ディーオセブタムは、その円筒状の船体に取り付けられた夥しい数のレーザー砲台を起動する。
P.O.Dによく似た兵器であり、TRINITY.の専用武器でもある。
しかしそれらは、エリガードに全くダメージを与えられない。
『有効打確認できず。しかしながら、恐らく何らかの消耗をさせている。攻撃続行せよ』
ディーオセブタムに搭乗するのはTRINITY.の現在の警視総監であり、今作戦の最高責任者であるロドム・クエリアス。
皮肉にも、最も権力から離れ、私利私欲を抑えていた人間が、指揮官として矢面に立つことになったのだ。
ちなみに、彼に仕事を押し付けて逃げた者たちは既に死んでいる。
ジェネラスの襲撃に遭ったのだ。
「愚かな」
だが、エリガードは反撃しない。
反撃することに意味はないのだ。
何故なら、それですべてが終わってしまう。
『敵の主力艦級に攻撃を集中。全艦船、マルチ包囲陣形に変更し、射線を被せないように攻撃せよ』
TRINITY.の主力艦隊の集中攻撃。
どんな艦船でも、それに耐えられる程強くはない。
そのはずだった。
エミド艦ですら、沈められるはずの一斉攻撃。
だがそれらは、エリガードのシールドを突破する事すらできない。
『慌てるな、敵は確実に消耗している』
『射撃を続行せよ、崩せない防御などない』
『命令を無視するな、統制を乱すことこそ敗北となる』
通信は段々と自信なさげになっていく。
士気も下がり、撃つのをやめる艦も出てきた。
『射線上の艦船は撤退せよ、最終兵器の充填を開始する』
そして、痺れを切らしたディーオセブタムは、エネルギーをその先端部に集約し始める。
人類の最先端を優に超えた機関が放つエネルギー。
それが、今エリガードに向けられようとしていた。
「ああ、この攻撃が終われば、あの悪夢のような存在のシールドは消失する」
それが、TRINITY.の者達の共通認識であった。
エネルギーの高まりが最高潮に達し、そしてエネルギーの奔流となって放たれた。
「つまらないな」
そして。
その奔流は、エリガードに届く前に吹き散らされた。
直後、エリガードが一瞬でエネルギー充填を終了させる。
『プリズムクラスタ』
そんな声が戦場に響いた直後。
エリガードから放たれた無数の閃光が、周囲にいた艦船全てを貫いた。
数万居る艦全てを、同時に。
「馬鹿な、あり得ない!!」
誰がそう叫んだだろうか?
それは、TRINITY.の面々全員の絶望を体現するかのような一言だった。
エリアスは煮えたぎりそうな怒りをその心の内に潜め、冷徹に、酷薄に宣言した。
「TRINITY.、お前たちは――――終われ」
TRINITY.艦を貫いていた光線が全て直角に歪曲し、一つに纏束する。
そして、一直線にディーオセブタムへと飛び込み――――内部で再び拡散して荒らし回り、それが法則であったかのように船体装甲を破壊して蜂の巣状へと変え、直後ディーオセブタムは内側から圧壊、エネルギー崩壊を引き起こして自壊した。
『TRINITY.旗艦を破壊した。これより、ヤルヴェナプライム殲滅作戦を開始する』
そして、その日。
歴史は塗り替わった。
TRINITY.の、本拠地だったヤルヴェナプライム。
そこは、惑星、ステーション、コロニー――――そのすべてを破壊され、沈黙の戦場......
サイレンストリニタムと呼ばれる星系へと名を変えたのであった。
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