156-バーダレン襲撃/許せぬ事
バーダレン襲撃は、恙なく行われた。
まずは、ケルビスが率いる攻撃艦隊がゲートから登場する。
前回までの戦いは全て、ワームホールからの奇襲を行っていたため、TRINITY.の艦隊はバーダレン最大の拠点であるバーダレンⅤの巨大シップホルダー前に集結している。
『惑星だけではなく、私めにこのようなものまで与えてくださり感謝しております』
「結果で報いろ」
『はっ』
そして、ケルビスもまた、今までの艦船ではなく、作戦用に特化した特殊艦である。
ジェネラスの攻撃型とは異なり、ケルビスが乗っているのは防御型だ。
「エリガードに搭載する予定の新装備を載せてある。お前にはそのテストをやってもらう」
『お任せください』
TRINITY.の相手をするのも、こんなことを思うのは彼らに不敬とは言え....
そろそろ退屈してきたので、こちら側の実験に使う事にした。
「その試験機はお前に渡すが、今回装備している装備はライセンスが切れると同時に自壊する。つまりは、どうカスタムするかはお前に任せる」
『装備を選ぶ権利を与えてくださり、光栄の至り』
ただ実験機という訳ではない。
エクスティラノスが本来持たない、持つ必要のない、「好きな装備を選ぶ権利」も同時に付けている。
『交戦を開始します』
「ああ」
今回は当然のようにドミネーターノクティラノスが展開されているので、敵に勝機はない。
ただし、最初は撃たず、矢面にケルビスが出る。
「よし、検証を開始せよ」
『熱量急速拡散装甲、起動します。』
TRINITY.艦の攻撃を、ケルビスはシールドを張らずにその身で受ける。
だが、その装甲が傷つくことはない。
何故か?
それは、新技術.....エネルギー急速拡散装甲によるものだ。
装甲表面上に掛かったエネルギー負荷を装甲内部に浸透する前に高速で拡散させ、より波長の弱い衝撃へと変えて無力化する。
これは物理衝撃や、爆風による熱的影響にも作用する。
「次だ」
『はっ、短周波過剰増幅装置、起動します』
以前のパワーコア・ディスラプターから改良を経て、不殺ではなく殲滅の方向性へ持っていく事にした兵器である。
パワーコアのエネルギーを増幅し、オーバーロードさせることで強制停止させるパワーコア・ディスラプターとは異なり、こちらはパワーコアだけではなくあらゆるエネルギーに作用する。
レーザー砲撃は過剰増幅されたエネルギーに帯電対象だった粒子が耐え切れずに崩壊、指向性を失い離散する。
そして、対象となった艦船といえば...膨れ上がったエネルギーが装甲に凹凸状の破損形状を生じさせ、直後行き場を失ったエネルギーと共に内側から爆裂する。
「最強の範囲砲撃というわけか」
問題は、こちら側の消耗も大きい事だが。
エネルギーの増幅装置という側面を持つ以上、こちらもその代価を支払わなければならない。
実験機の機関なら全く問題ないが、ノクティラノス...例えば、警備用のライアットノクティラノスなどに搭載すれば、まず間違いなく照射中にパワー不足でシステムがダウンするだろう。
当然だが、この影響はシップホルダーにも及ぶ。
この試験機を量産して派遣、攻撃を耐えながら照射し敵を壊滅させる。
つくづく、このVe’zという文明の力を実感する。
「ケルビス、艦隊を引き上げさせろ」
『かしこまりました、エリアス様』
僕はケルビスを退かせ、最後の領域、トリニティドメインへの侵攻計画を実行しようとする。
だが――――
「....なんだ、これは?」
僕は、それに目を通し、苛立ちを露にせざるを得なかった。
『Ve’zに警告する。 諸君らがエリス(年齢不詳)を誘拐し、不利な状況に置いている事は明白である。よって、我々も彼女の関係人物を拘束している。攻撃を期日までに静止しなかった場合、以下のリストにある人物を殺害する』
警察が人質を取るとは。
身も蓋もないが、しかし有効な手立てだ。
誰がこのメールを作成したかも、僕にはよくわかる。
「......エリスに相談しよう」
僕は立ち上がり、その場を去るのだった。
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