142-シュマルとケイトリン
『それで、何か言いたいことはあるか?』
『我等は、主君の帰る事のない旅路に敬意を示し、この地を去りました。他に弁明するべき事など何もありません』
『ケイトリン、硬すぎるッスよー。ここは、このシュマルが! ごめんなさい!』
帰ってきたのは、ケイトリン=ヴァンティラノスと、シュマル=ハイドティラノスの二人だ。
ナル=ラストティラノスは依然連絡が取れず、どこで何をしているのか全く分からない。
破壊はされていないようだが.....
エリアスの最後の命令が、『人間を従える術を研究せよ』だったので、どこかの国に潜んではいるとは思うのだが.....
『....ご、御免頂く』
『御託はいい。何故招集に応えなかった』
ケイトリンは妨害のエキスパートであり、シュマルは隠密のエキスパートだ。
今までの戦い....特に対エミド戦において、いれば本当に楽だったのだが....
遮蔽装置が装備が出来るだけのジェネラスとは違い、シュマルは本物の隠密だ。
隠れ潜み、情報を持ち帰る。
時には単体への奇襲も。
『我は、仕えるべき主君を失い、自壊するつもりでいました。それ故に、最近まで崩壊した超重力星雲の中におり、脱出に時間を要しました』
『自分はー、DR-221放棄ワームホールで寝て居たんすけど、通信が届く頃には崩壊が始まっていて、量子の海に流されるところだったんスよ』
自殺未遂と風呂で寝て溺れる馬鹿か。
僕は軽く頷く。
『Ve’zは今、大変革の時期にある。お前たちは、今までと違うVe’zを受け入れられるか?』
これは重要な質問だ。
僕は今、Ve’zの主君ではなくエリアスとして動いている。
それはとても重要で、単一にして個のVe’zは個の群れへと変わりつつある。
滅亡が回避できるかは分からないが、人間の命題である刹那の楽しみに傾きつつあるのだ。
それに、前時代の常識しか知らないこの二者が耐えられるか?
これだけが僕の懸念点だ。
いくら人格が僕の望む方向に矯正されているとはいえ、思考の積み重ねによる感情だけは制御できない。
もしこの二人に感情があるのであれば......
『度合いによりますが…我は、その…以前とは何かが変わったのを感じております。例えそれがどのような変化であろうと、我は問題なく受け止められるかと存じます』
『エリアス様のする事に間違いはないッスから、どんな事でも抵抗したりしないッス!』
二人は一時的とはいえ、どんな変化も受け入れると承諾してくれた。
それから僕は、幾つかの確認事項を二人に伝える。
『今、僕は大切な人間を何人か抱えている。無礼があったとしても攻撃はするな』
『承知しました』
『了解ッス!』
『それから、この惑星はエクスティラノス専用の憩いの地。荒らした責任はしっかり取ってもらうぞ?』
『は…ははっ!』
『わ、わわ…わかったッス!』
何か後ろめたい事でもあるのか?
そう思っていたが、思考リンクで伝わったようで二人は急に弁明を始めた。
『わ、我は惑星上への直接侵入は避けたかったのです! しかし、シュマルが…』
『聞くなり突っ込んでいったのはそっちッスよ!』
全く、見苦しい。
エクスティラノス同士の不仲だけは、僕にはどうしようもできない。
彼等を創ったのは僕ではないから、理解することも解釈することも出来ない。
こればかりは、時間に全てを委ねるほかないのだろうと、僕は逃げの選択肢を取るのであった。
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