141-帰還する脅威
TRINITY連合軍との戦いから二週間後。
僕はいつものように自由時間を使い、農業惑星で花を愛でていた。
.....いや、勿論。
花を愛でる趣味はないのだが、ケルビスが香油用に育てているらしい品種の花が咲いたというので見に来たのだ。
『エリアス様には、常に上品な香りを纏っていただきたいのです』
「だが、真に高貴だというなら、身にまとう香りがなんであっても上品ではないか?」
『おお...! そこまでは考えが至りませんでした、お許しください』
質問をしたら、感心された。
まだ僕は、ケルビスの思考が完全に分かるわけではない。
『では、エリアス様の今の匂いで香水を作成しましょう――――』
「待て。それは僕が纏うから上品なのだ」
『下々の者はそうではないという事ですね、理解しました。』
すぐに暴走するので、僕が止めないと変な結果になる事も多い。
そもそもが、ドミネーターノクティラノスだって僕は製造する予定がなかった。
「殲滅力をもう少し上げたいが」という言葉を拾って、タッティラが勝手に進めた増産計画である。
言葉に気を付けないと、裏で何が起こるか分からないのが怖い所だ。
「それにしても、いい天気だ」
『そうですね。ここ最近は数日雨が続いていたので』
この惑星の大気は地球とそう変わらないが、この土地は立地的に雨が多い。
入道雲が出来るのも珍しくなく、あまりに雨が多いときは屋根を展開して果樹を守る事もある。
茶葉の栽培は今はここでは行っておらず、もう少し雨が少なく温暖な地域を整地したうえで行っている。
「(ニトは元気だろうか?)」
同じ空の下.....ではないのだが、ニトは定期報告だけは欠かさずに上げてくれている。
ひとつ苦痛なのは、ニト達の事を大っぴらに話せないことだ。
エリスにバレたら、殺されるだろう。
何もやましいことはしていないが、説明する方が面倒だ。
「ケルビス」
『はっ』
「....TRINITY.への反撃作戦はどうなっている?」
僕は話題を変える。
おおよそ、この楽園のような場所で話す内容ではないと理解しつつも。
『はっ。万一にも人間如きが図に乗らぬように、綿密に計画を構築しております』
「良い...初期目標は?」
作戦には初期目標が必要だ。
僕がそれをケルビスに問おうとしたとき。
巨大な重力反応が、農園のすぐそばに出現する。
この大きさは......農園が巻き込まれる!?
『エリアス様、離れてください!』
「わ、分かっている!」
僕が離れた場所にテレポートすると同時に、重力反応の中心から何かが現れた。
重力干渉で、農園の建物がいくつか果樹と共に潰れる。
「これは.....」
見覚えがある。
”エリアス”の記憶の中にある、その姿は....
「ケイトリン! 何故こんな事を!!」
ケイトリン=ヴァンティラノス。
長く連絡のついていなかった、エクスティラノス最後の三人の一人が、農園の上に出現していた。
艦体が巨大すぎて、農園が今にも風で消し飛びそうだ。
「ケイトリン! 今すぐ軌道上に上がれ」
『承知!』
僕はエリガードを軌道上に呼び、その上にテレポートする。
そして、内部に入って通信システムを起動するのであった。
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