134-ジアン対オベルナイツ
シルターエルト星系での戦闘から数分後。
惑星の外周部のアステロイドベルトに、六隻の艦隊が出現した。
「まずい.....このままでは.....本国にどう報告すればよい....?」
『とにかくまずは、シルターエルト星系を脱出しなければ。ここは潜伏し......』
それに乗っているのは、オベルナイツ。
オーベルン神聖連合の特殊部隊である。
今回は艦隊の標準艦に擬装し、敵の旗艦の制圧をもくろんでいた。
だが、実際は接近すら許されずに全滅。
ワープコア安定化装置で離脱したものの、後がない状況であった。
『待て、ワープ反応を検知した。一隻こちらに飛んでくるぞ』
『Ve’z艦でなければよいが.....』
オベルナイツ達は、一斉に殺気立つ。
だが、実際に飛んできたのはVe’zの特徴を持つ船ではなかった。
それは、クロペル共和国軍の標準艦船とよく似た船である。
『ハ....何かと思えば、敗残兵ではないか』
オベルナイツ艦隊は、即座にその艦に向けてレーザー砲を放つ。
だが、その艦は即座に回避行動へと移り、加速しながら砲を放つ。
その一撃はシールドを容易に貫通し、オベルナイツの一隻の装甲を叩き割った。
『な......何.....?』
「思い知れ、私たちの怒りを」
その艦――――強襲型フリゲート・イーロスに乗るジアンは、次なる目標に狙いを定める。
『あの艦を撃ち落とせ!』
「無駄だ」
イーロスはバレルロールを行いながら、追尾弾を振り切り、再びオベルナイツ艦に最接近する。
「この日を待ち侘びていた――――お前たちの顔面に、この弾をぶつける日を!」
ジアンは無慈悲に、兵器のトリガーを引いた。
三連装砲塔四つが同時に火を噴き、そこから実体弾が放たれる。
その先端は対シールド構造であり、シールドの接合面を突き破り、直進する。
直進した先にあった構造――――即ち装甲を貫通した弾は、その内部の信管に十分な衝撃が伝わる。
それは、核反応を生み出すトリガー。
小型核とも言うべきそれは、オベルナイツの艦一隻を葬り去った。
『潰せ!』
「ティニア様の怒りは......こんなものではない!!」
イーロスは機関出力を上げ、赤い光の尾を引いて上へと上昇する。
レーザーがシールドをかすめるが、それがイーロスの動きを止めることはない。
『まずい! 止めろ!』
「いいや、止まりはしない」
直後。
イーロスは直下に向けて加速する。
無数の光の線をすれすれで躱し、砲を三隻のオベルナイツに向けた。
そこから繰り広げられるのは、正確無比な射撃によるワンショットキル。
『お前は誰だ! 何故そんな強さを――――』
「私はジアン。お前たちに、神の怒りを以て天罰を下す者だ」
イーロスは錐揉み飛行から直帰し、オベルナイツたちに対して平行になるように角度を調整する。
『ハッ、Ve’zに力を借りて天罰か! 笑わせる!』
「......」
ジアンは何も言わない。
言っても誰も信じないだろう。
このイーロスが、Ve’zによる一切の改良を受けていないことを。
『図星か! 死ねぇ!! 汚らわしい肌の異教徒が!』
「――――女王に対する侮辱。祖霊に対する暴虐の数々――――私はここで、全てに決着をつける!」
加速したイーロスは、残る三隻の合間を駆け抜け、まずは一隻に砲弾を撃ち込む。
シールドが砕け散り、イーロスは旋回してもう一発を撃ち込んだ。
今度は弾頭入りだった砲弾が起爆し、オベルナイツの席がまた空となった。
いいや。
オベルナイツは今日を持って、アルバイト募集中となるのだ。
そのすべてを失い。
『調子に乗るなぁ!!!』
「調子に乗ってきたのは、お前たちの方だ」
オベルナイツの一隻が仕掛けた突撃を、イーロスはまるで流れを泳ぐ魚のように回避し、去り際に一発撃ち込む。
シールドが砕けたところで、オベルナイツの男は懇願した。
『た、頼む.....命だけは助けてくれ!』
「ああ、構わない」
ジアンは無表情のまま答えた。
オベルナイツの男は安堵した。
『掛かったな、阿呆が!』
「いいや。クロペルの戦士は――――敵にも情けを与える」
クロンペリャ最大の慈悲、死を。
イーロスが駆け抜けた直後、その艦は内側から火を噴いて砕け散った。
『その力は異常だ! 人間の扱うものでは――――』
「違うな」
そして、最初に始末し損ねたオベルナイツ艦に、とどめの一撃を放った。
「全て、クロンペリャの力に過ぎない」
『異教徒め――――』
イーロスは爆炎に照らされ、暫くその場に留まったのち、本隊へと戻るためにワープアウトしていった。
――――試作襲撃型フリゲート、イーロス。
かつて量産されようとしていた、クロペルの最終兵器の実力が垣間見えた戦いであった。
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