133-蹂躙、再び
『ウィスキー7番艦、大破。離脱します』
『チャーリー21番艦、穴を埋める!』
オルダモン・Ve’z艦隊は進撃する。
無数の龍が、うねり、交差しながら、艦隊の間を駆け抜ける。
『敵の大型艦を確認』
『オルダモン側に離脱を要請』
『許可する、攻撃終了後はチャーリー分隊に合流、交差のタイミングで帰還せよ』
『了解』
そして。
鱗が剥がれ落ちるように、ラエリス艦隊のみがオルダモン艦隊と分離する。
そして、再び群体を形成し、キロマイア大型戦艦にラムアタックを仕掛け、一斉に自爆した。
有効打を与えられないと判断したラエリスは再び群体へと戻り、レーザーの雨を躱しながらTRINITY.旗艦の背後に回り込む。
『屑鉄共がぁあああああ!!!』
TRINITY.艦隊の周囲を旋回するラエリスは、強力なレーザー砲であるダウンレイを、TRINITY.旗艦に放つ。
シールドがまるで紙切れのように貫かれ、TRINITY.旗艦は爆発炎上した。
『ダメージコントロールッ! 戦線を維持せよ――――くっ!!』
炎上する艦橋で、TRINITY.司令官はそれでも指揮を出し続ける。
だが、煙に巻かれ――――その直後、旗艦は内部から誘爆し崩壊する。
それを見守るように、その周囲をラエリスが旋回していた。
『散開せよ』
『了解』
そして、ラエリス艦隊は再び動き出す。
オルダモン艦隊と合流し、余剰分は他の分隊との交差のタイミングで分離、合流を行っていく。
『司令官が殺されました、我々の艦隊は指揮系統が混乱している!』
『こちらもそれどころではない! 各自で対処せよ』
『そんなぁ!?』
TRINITY.艦は統率を失い、オルダモン艦隊の餌食となる。
海賊に対して猛威を振るうその武器も、トラッキングが間に合わず発射できない。
旗艦がいなければ、位置予測での発射もできないからだ。
『.......Ve’z。偉大なる者たちよ、感謝する。我等は祖国に報いる事が出来る。戦場を駆け、命を散らす同志たちを減らす事が出来た』
チャーリー分隊のオルダモン人は、ラエリス艦隊に感謝を述べた。
だが、ラエリスに感謝は伝わらない。
『私語は不要です。次が来ます』
『.......そうですね。各艦隊、一層の連携を以て挑め!』
接近してくるオーベルン艦隊とヘルティエット艦隊に対して、龍たちは再度動き出すのであった。
Ve’z&クロペル共和国軍VS ジスティカ王国&キロマイア皇国&TRINITY.艦隊の戦場は、最早蹂躙に変わっていた。
クロペル共和国軍の有無を除けば、完全に対ジェネラス戦の焼き直しであった。
「..........我々の選択は、過ちであったのか.....」
キロマイア側の司令は、そう呟いた。
自分たちが蔑ろにされた事で裏切ったキロマイアだったが、今そのツケを支払わされている所であった。
ベネディクトによって壊滅状態に追い込まれた艦隊は瓦解し、司令の乗る旗艦ですら半壊し、宇宙服を着ていたことで助かった司令を除き、乗員は皆死んだ。
崩れ落ちた艦橋には最早生命の輝きはなく、死んだように司令官が一人座っているだけであった。
『貴様が司令官か?』
「.......貴殿は...Ve’z人か」
その時。
司令官は呼びかけられ、顔を上げる。
そこには、真空の宇宙でなお、その美しい容貌のまま立ち続ける男がいた。
ジェネラスである。
『敗戦の汚名を着せられ生き残るのも、お前にとっては苦しい選択肢となる。選べ――――』
「......キロマイア皇軍に属する者の端くれとして、私は貴殿に決闘を申し込む」
司令官は立ち上がる。
宇宙服は無事だが、既に左腕は潰れ、ぶらぶらと揺れ動いていた。
右手だけで銃を抜き、ジェネラスに向ける。
『さあ、来い』
「いいや、私はお前たちの言いなりになど――――ならんよ」
司令官はその銃を素早く自分のこめかみに向け、一発撃った。
真空の中で、銃声は響かなかった。
ジェネラスは物言わぬ骸と化した司令官を抱え、その場を後にした。
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