125-狩人たちの戦場
「クソッ....!」
分隊長は、コンソールを叩いた。
司令官不在の状況で、副司令は襲ってくるVe’z艦隊に対して、全艦隊に分隊長を割り振り逃走させることを選んだ。
そして、第221番分隊長に命じられた彼は、なんとか艦隊を退避させたところであった。
「雑魚なんかじゃなかった.....」
ブリッジに声が響く。
この艦のレーダー係である女性が発した声が。
絶望している。先ほどまで、ノリノリで敵を追い詰めていた彼女がである。
「ふざけんな、俺たちを利用したってのか」
『こ.......ら! 第3.......接敵............全滅――――――』
ローカル通信がブリッジに響き、破壊音と共に途絶する。
状況は絶望的であった。
退路もいつの間にか断たれており、分散した艦隊に出来ることはただ逃げる事だけ。
だが、
「エース艦隊も全滅したのに、俺たちにできる事なんてあるのか?」
「それでも今はお前が分隊長だ」
『.....頼りにしています』
味方からの通信を受け、彼は艦隊のオーバービューをチェックする。
最初は七隻いた艦隊は、二隻が落とされ五隻となっていた。
「大破が1、中破が4、無事なのはこの艦だけか....」
指揮系統が滅茶苦茶になった影響で、TRINITY.艦が一隻、ジスティカ王国艦が三隻、オーベルン神聖連合艦が一隻という状況になっていた。
旗艦はジスティカ王国の艦であり、彼を庇って沈んだ艦はTRINITY.とオーベルン神聖連合の艦であった。
『指揮するものが居なくなれば、皆の命運も尽きます。未来を――――よろしくお願いいたします』
『神は正道を歩めと仰いました。分隊長、貴方の為に殉じる事こそ我が定めだったのです』
二人の末期の言葉を思い出し、彼は震えた。
そして、恐怖がやってくる。
「.....ワープアウト反応あり! 数、3!」
「全艦、戦闘準備!」
彼は全艦に指示を出す。
ここにピンポイントで飛んでくる少数の艦船など、敵以外ありえないからだ。
だが、
「味方だ! 攻撃中止!」
飛んできたのは、ボロボロになったTRINITY.艦二隻とキロマイア皇国艦一隻であった。
慌ててスキャンするが、既に生命反応は数人分しか残っていなかった。
『.......そちらは、味方か?』
「そうだが.....」
『頼む、逃げてくれ....奴らは、俺たちの仲間を回収している、死んだ奴も生きたやつも、例外はない......頼む、俺たちの事は気にするな....!』
「そういわれても....」
「新たにワープ反応、1!」
その時、ブリッジに報告が響いた。
そして絶望が訪れる。
現れた艦艇は、全員の予想を裏切るものだった。
巨大なカーゴを抱えた戦闘艦と言った様相で、触手型砲塔を備えていた。
『あ、あれだ! あれが俺の仲間たちを....!』
直後、その艦から無数の小型機が発艦する。
『逃げろっ!』
そして、221分隊の者たちは見た。
小型機が敗残艦に纏わりつき、装甲を貫通して内部の人間を回収していく姿を。
『くそっ、化け物が!!』
「待て、CR-021! 勝手な行動は...」
その時、艦隊の一隻....TRINITY.艦が攻撃した。
攻撃して、しまった。
『ぐわああああっ――――』
「CR-021!! CR-021!!」
Ve’z艦の放ったたった一撃の砲撃で、中破していたとはいえTRINITY.艦はシールドと装甲を抜かれて轟沈した。
彼は一度も見たことがなかった、レーザー砲が、艦を貫通して突き抜けていく所を。
「全艦に告ぐ! 撤退せよ!」
『了解!!』
艦隊は即座に反転し、ワープで離脱しようとする。
「ワープエネルギー確保、いつでもワープできます!」
『こちらBR-111、ワープドライブが安定しない、敵に何かされている! ......私たちの事はいい、逃げてください!』
「分かった、協力....感謝する」
そして、更に一隻を置いて艦隊は離脱した。
結局この艦隊も、一隻ずつすり減らされて全滅するのであるが......
それは結局、この星系での戦闘において......一般的な事であった。
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