123-牙を剥く脅威
ディレンズとクロモース星系では、攻撃が続いていた。
Ve’zにとって、偽物の拠点構築やハリボテ艦隊の構築など容易い事であり、コアブロックのみを自爆させて機密を守るなど、「やられたフリ」に努めていた。
『大戦果ですなぁ、まさか奴らがこれほど弱いとは....』
『伝説を恐れ過ぎていたのかも....いや、それこそが彼らの策略だったのかもしれませんな』
『ええ、既に我々は四つの基地を落としています。我々をはるかに超えた知性の人工知能であろうとも、この数には勝てませんよ』
TRINITY.の武装は、エミドよりサルベージした技術のその更にサルベージングされた技術である。
アンデュラス合衆国より以前から、TRINITY.は制裁をかわしその技術を使ってきた。
警察組織という形であったために、エミドに目を付けられることはなかったのだ。
『敵艦隊、ゲートより離れ、太陽付近に展開中』
『承知した。では拙者は、敵予備艦隊の特定に回る』
そして、連合軍側は見事に策に嵌った。
脅威を警戒する必要がなくなり、余すことなく艦隊を星系の中央部に展開し始めたのだ。
『今までの撃沈された艦の担当AIのバックアップはあるな?』
『はい、存在しています』
『よし、それをインストールした艦隊を派遣せよ』
殴られたら殴り返してもいい、というルール上、エクスティラノスは出撃が出来ない。
そこで、エリアスはヴァリアント=ノクティラノスという特殊な艦船(ワームホール警備用だったが、一世代前に取り残されてしまった)を増産させ、連合軍の陣地に向かわせた。
『敵艦隊のワープアウトを確認!』
「放っておけ、どうせ雑魚だ」
しかし、ヴァリアント艦隊は、敵陣と距離を取って到着した。
それを、TRINITY.側の司令は奇妙に感じていた。
「奴らは再ワープする気だ、追うぞ」
『何故ですか?』
「こちら側の陣地に突っ込まれると面倒だからだ!」
TRINITY.側の戦闘艦隊が転進し、ヴァリアント艦隊のワープ先である惑星へとワープを開始する。
そして。
連合軍はこれから、真の恐怖を味わう事となるのだ。
「......どこだ、ここは?」
『分かりません! 味方からのシグナル途絶!』
「くっ、雑魚にしてはやるわけか......」
TRINITY.艦隊二万隻の前には、宇宙空間に輝く無数の”目”.......
ヴァリアント=ノクティラノスの三千隻の艦隊が存在していた。
「こ......これは......!」
「狼狽えるな! 数がいようと、このTRINITY.標準砲撃であれば....!」
TRINITY.の艦隊は、一斉に射撃を開始する。
六連装のプラズマ粒子砲を束ねた砲撃であり、まだこれに耐えられるシールドは存在せず、そして先ほどまでのVe’z艦隊もこれに耐えることはできなかった。
『敵艦隊に弾着。直撃です!』
「やったか!?」
だが、次の報告は絶叫のような声色であった。
『.........だ、ダメです! 敵艦隊、シールド減衰なし! シールド減衰を確認できません!』
「バカな!」
司令は叫ぶ。
それは、単なる驚愕ではない。
生まれたころから信じていた常識を覆された者の驚愕であり、絶望だ。
「――――誘い込まれたのか」
腐っても指揮官に選ばれた男。
敵の意図に気づき、即座に指示を出す。
「全艦、ワープアウト! 後退する! 同時に本隊へ指示を出せ!」
『.....ワープできません! 次元コイルが帯電していて.....!』
「ええい! ならば救援を!」
『ですから、先ほどシグナルが途絶したと――――』
「頼りにならんな、全く! 通信士官! 総出で回線復旧急げ!」
『『『『『了解!』』』』』
だが、そんな猶予は最早赦されてはいなかった。
ヴァリアント=ノクティラノスはただ、無慈悲に――――エネルギーを充填し、解き放つ。
放たれた一撃は、闇夜を切り取りながら突き進み、TRINITY.艦船に突き刺さった。
シールドを即座に貫通したレーザーは、装甲を蒸発させて内部に浸透し、内側で急速に反応を起こす。
膨れ上がったエネルギー爆発に呑まれ、艦隊は即座に瓦解する。
まるで風船が膨らむように、レーザーが直撃した艦船から高熱量の爆発が巻き起こり、接触した艦を巻き込んで撃沈させているのである。
「何が、何が起こったというのだ!?」
『攻撃されています! シールド貫通されました、第七装甲板融解! 機関部に被弾.......クソッ、俺は逃げるぞ!』
ひと際目立つTRINITY.旗艦は格好の的になり、ヴァリアントノクティラノスによって集中砲火を浴びていた。
脱出ポッドも、脱出と同時に超高精度射撃で撃墜されている。
「ならば、一隻でも! 総員、遺書は書いたな! 敵艦の一隻に全火力を集中させる! 息を合わせろ!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
そして、TRINITY.艦隊二万隻は、闇の中に消えた。
暗き暗黒星系で、Ve’z達の狩りが始まる――――
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