119-女王の懇願
「これは....どういうことだ?」
『私めにも分かりません』
目の前で、モニカが五体投地している。
だが、異常なのは彼女が全裸である事。
ケルビスが来た途端、僕に向かって驚きの視線をぶつけて来たかと思ったら、服を脱いで五体投地したのだ。
『ただ、クロペル人の文化では、服を脱いでの五体投地は完全服従――――つまり、完全投降という意味ですね』
「どういう事だ? 説明しろ、モニカ」
「...私はモニカではありません。...その名前は、身分を偽るために、咄嗟についた嘘で...」
『貴様...エリアス様に嘘をついただと!? 死んでもいいという意思表示か!』
「すみませんでした!」
気になって調べると、モニカと全く同じ容姿の女性が...ティニア?
この女性が、クロペル共和国の女王か...
「頭を上げろ」
「はい!」
もしそうなら、僕は問わなくてはならない。
「どうして、戦争中なのにここへ来た?」
「.......Ve’zの皆様方の事を信用していないわけではありませんでした。それでも.....オーベルン神聖連合を刺激した場合に備えてもいました。両方に....それか、どちらか片方に攻撃されたとしても、ここなら被害は最小限で済みますから....」
「お前は国民と自分の命を秤にかけ、どちらが重いと思う?」
僕は核心に迫る質問をする。
議事録を見た限りでは、彼女は結局僕の判断待ちで、同盟を保留されている。
この同盟の理由が何なのか知れれば、僕は彼女に何もしない。
「........国民です」
「....そうか」
彼女の心境に大きな変化はないように思える。
これでサイコパスだったら分からないが、その時は同盟を切ればクロペルは緩やかに消滅するだけだ。
「ケルビス。彼女の言葉に私利私欲は感じないな」
『そうでございますね』
「では、交渉の時間だ」
「.......はい」
ここでやるのもあれなので、僕は場所を移すことにする。
あ、その前に。
「あーエリス?」
『なーに?』
「今から少し会議で席を外す、夕飯までには戻る」
『分かったわ、破ったら夕ご飯は私が食べちゃうから』
こわい。
僕は頷くと、モニ.....ティニアをアロウトの会議室に一瞬でテレポートさせる。
「えっ? えっ?」
「席に着くといい。同盟の内容を一度整理したい」
「....はい」
僕とティニアは、ケルビスが用意した茶を飲みながら同盟について話し合う。
「......我々には差し出せるものがありませんから、防衛戦力の提供の代わり、資源を....」
「資源は間に合っている」
「でしたら、人材を.....」
「必要だと思うか?」
「そ、それなら.......私が身を捧げれば!?」
「.........」
話にならない。
ティニアは美しく、今まで出会った女性の中ではトップクラスの魅力を持つ。
確かに、豊満というわけではないが、ミルク色の髪と褐色の肌、それにスラリとした肉体は、男を惹きつけるだろう。
だが僕は、今は生憎女だ。
それに、好きで女性を囲っているわけでもない。
本来エリスだけでいいものを、一人オマケがついてきてしまったようなものなのだから。
「君は確かに魅力的だが、僕には不要だ」
「そ、そっか....そうだよネ....」
「僕が要求をしよう。....Ve’z人の身柄を、エクスティラノス全員分でいいので、そちらで保証してくれ」
「....そんな事で....?」
「クロペル共和国の娯楽文化はとても興味深い....だが、行く先々で偽造した身分証を使うのも面倒だ。そちらで保証してもらえれば、家族で旅行ができる」
「かっ、家族....うん、分かりました」
ティニアは一気に赤面した。
何を想像したのか分からないが、今はこれでいいだろう。
「それと、敬語は辞めて欲しい。”モニカ”の時の威勢はどうした?」
「....うん、やっぱり変だよね.....」
「それが一番自然でいい」
「うっ、うん!」
何やら挙動不審な様子のティニアだが、僕には特に悪意や裏があるようには思えなかった。
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