118-突破戦
エリアスは、早朝の街を駆け抜けていた。
その目は紅く、制限されているとはいえ卓越した身体能力と熟練した肉体の動かし方を駆使して、最短ルートでモニカの囚われている場所まで直行する。
「...これは」
そして、気付く。
警備システムが解除され、代わりに別の警備システムに書き換えられたエリアに。
一見すると何も無い住宅街に見えるが、中に入りセンサーに触れれば、すぐに警報が鳴り響く事になるだろう。
「愚かな」
だが。
エリアスの目が輝くと同時に、警備システムは無効化される。
今更エリアスに、その程度の雑な警備が効くはずもない。
「ここか」
エリアスは、その中の一つの住宅に目をつけた。
その家は大きい事以外にこれと言った特徴もなく、とてもモニカを攫った者達がいるようには見えなかった。
「お前は理解できない」
エリアスはそう言いつつ、跳躍した。
空中で体を捻り、そのまま上階の窓に突っ込む。
ガラスを蹴り割ったエリアスは、室内へと降りた。
「な、何だ!?」
「殺せ!」
中にいた四人が銃を抜くが、彼らが撃つより先にエリアスは四人を制圧した。
そして、扉を蹴破り先に進む。
「敵襲!」
「殺せっ!」
「次から次へと...アラタ」
「ああ」
エリアスは目を閉じ、元の色へと戻す。
即座にその姿がかき消えて、一人の胸を手刀で突き刺す。
そして、その首を掴んで盾がわりにしながら突き進んでいく。
「?」
そして廊下を曲がった時、真横から何かが飛んできて炸裂する。
それはエリアスの身体に大きく傷をつけるが、エリアスは全く気にした様子もなく肉薄し、攻撃者の頭蓋を殴打で粉砕する。
「携帯砲弾が効かないだと!?」
「残念だったな」
エリアスはそのまま大広間に出て、
「死ね!」
八人によってレーザー乱射に襲われる。
だが、エリアスがそれを避けられないはずがない。
ひとたび認知を加速させれば、レーザーなど空中に浮く邪魔なものでしかなくなるからだ。
「ぎゃあっ!?」
「こいつ、人間じゃっ!?」
レーザー弾をかわしながら、エリアスは壁を走り抜けて部屋の反対側に回り込み、まだ気づいていない三人の背後を取る。
そして、
「終わりだ」
華麗なる回し蹴りが決まり、三人は吹き飛んで気絶した。
蹴りの威力とその衝撃波によって、身体の内部をぐちゃぐちゃにされたのだ。
「さて...」
エリアスは前を見た。
恐らく扉の向こうに、モニカが居るのだろう。
そう確信した彼は、扉向けて一気に駆けた。
ティニアは、まさに危機に陥っていた。
彼女のすぐ側に、注射針が迫っているのだ。
注射の中身は、強力なドラッグ。
精神をズタズタに破壊して、強力な依存性を持たせる死のドラッグだ。
「暴れるなよ、せっかく鎮静剤を打ったんだからなあ」
「っ...」
ずっと国のために動いてきたというのに、ただ悪に蹂躙されるしかない。
そんな終わり方に絶望していたティニアだったが。
唐突に、扉が開いてエリアスが現れた。
「え...りあ...?」
まさか、最初からグルだったのかと。
「お前は、誰だ!?」
「お前のような屑に名乗る名など無い」
エリアスは誘拐犯の男に掴みかかる。
「ぐぇ.....お前は.....!」
「死ね」
首の骨が砕け散る音が響く。
そして、エリアスは何事もなかったかのように、誘拐犯を打ち捨てた。
「......大丈夫か?」
「う....うん.....」
ティニアは、驚いていた。
驚異的な力に。
だが、同時に.....
「(こ....こんなこと思っちゃダメだけど........凄く....かっこいい......!).....だ、だけど.....ここからどうやって出るの...? すぐに応援が....」
「問題ない。ケルビス!」
『はっ』
そして、エリアスはケルビスを呼び出す。
その姿を見て、ティニアは驚愕する。
Ve’zの使者と全く同じ姿であった。
それをその目で見たティニアは、エリアスが誰であるかを完全に理解した。
そして――――
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