116-彼方の地より来たれり
『これは一体?』
「エリスには絶対バレたくないからな.....宝物殿に匿いたい」
『......貴女様がそう仰るのであれば』
数時間後。
僕はグレゴルに直談判し、あの地下基地を丸ごと宝物殿内部の惑星に移設することに成功した。
気象条件がほぼパターと変わらない惑星を選んだつもりだ。
『それから、エネルギーブロックの増産を。一気に人口が増える』
『お任せください、エリアス様』
そして僕は、タッティラにエネルギーブロックの生産を依頼する。
カーライル基地のオリジナルには通常の食事を与えるが、流石にエリスと僕を賄い、少し余る程度の農園では、百と少しの数いるクローンに食事を配給する余裕はない。
「ポラノル、僕のいない間に何かあったか?」
『特にはない、って言ったらアレだけど。ボクの方で、オルダモン連邦の主席を処分したよ』
「そうか」
オルダモン連邦の主席は、負けが確定するや否や側近を主席に任じて逃げた。
だが、亡命直前でポラノルの率いるヴィジラント=ノクティラノス艦隊に襲われ、命を落とした。
「キロマイアがどうするかは勝手だが、ケルビスの方はどうなっている?」
『ケルビスは、現在パター星系で活動中です。詳細は話されませんでしたが、恐らくクロペル共和国の女王と交渉中なのでしょう』
メッティーラが答える。
パター星系......何故あそこで? と一瞬思うが、あの場所は一方通行の重力流を通れば首都から近い。
アクセスがいいうえで、こちらと交渉が決裂しても構わない場所を選んだのだろう。
したたかさを感じる。
「......ケルビスには交渉を急がせろ。僕は所要があるので失礼する」
『はっ』
僕は一旦、カーライル基地が位置する惑星........『フィオ』へとテレポートする。
「むむ。君は......感謝する、この惑星の探査任務を与えてくれたおかげで、周囲の環境を把握できた。そして.....恐らく、吾輩の名はニトのようだ」
「ニトか。記憶が戻ったか?」
「いいや。眠っていた時間が長すぎた、吾輩には何もわからん。イナヅマノカミがある程度の情報を与えてくれたものの、吾輩はもともと多くを語る身ではないようだ」
ニトは相変わらず謎の存在だ。
だが、無視できないのは、カーライル基地の元の国の情報――――
「『アルケーシア』とは、何だ?」
『カーライル基地の属する国家です』
「だが、記録にはない」
『外部と遮断されていたため、本国がどうなったかは不明です。ですが、我々はワームホールを使い、この地にやってきました』
「.....もしや、エミドと関連しているのか?」
『エミド? 我々の言語では、『集合体』の意味を持ちますね』
........エミドの存在は知らないが、その言葉の意味は知っている。
つまりは......エミドの源流か?
何にせよ、テクノロジーはエミドなど遥かに及ばない程高度だ。
基礎理論から情報があるため、対エミドの戦力補強に大きく貢献するだろう。
「ニト、食料はどうなっている?」
「吾輩も含め、備蓄の流動食を貰っている。ただし、このまま生活が続くと一週間程度しか持たぬようだ」
「よし、分かった。では、数時間後にエネルギーブロックが入ったコンテナを転送する。それを分け合ってくれ......味はないが」
「吾輩はもともと味が分からん。高度に最適化された肉体は、固形物も本来は不要だ」
「なら、何故......成程」
見れば、エネルギー供給システムがオフラインになっている。
確認すると、最初から付いていないようだ。
「吾輩の趣味だったようだな」
「........」
ニトの姿を見て、僕は少しだけ思考を巡らせた。
彼女は高度に最適化された肉体を持ちながらも、最適化された思考を持たない個体だ。
Ve’zのような、自害するという結論に至らなかった、謂わば完璧な生命体だ。
もし、アルケーシアの真実にたどり着く事が出来れば.......Ve’zの行き着くべき真の道も見えてくるだろうか?
「それにしても、吾輩のクローンが動き出した理由が分からん。普通は動かぬのだろう?」
「そうだな」
僕は巨大な謎に直面し、エリスを放置していたことをすっかり忘れてしまっていたのだった。
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