115-雑に出てきて派手に死ぬ男
そして、エリアスとエリスが旅行を楽しんでいる最中。
ついにオルダモン連邦は、首都を陥落させてしまっていた。
『それで?』
「...知らぬわ、侵略者共に言うべきことなど」
ダグトレは、一人矢面に立たされていた。
主席であるイワノフはさっさと亡命し、彼の前に待っていたのは責任我になし、と言った様子の部下達の華麗なほどのダグトレ推しであった。
あれほど渇望した主席への座は、今では呪いの座である。
『長きに渡る戦争も、Ve‘zの協力者を得たおかげで終わった。諸君らには服従か、逆らって死ぬかの二択しか残されていない』
「それがどうした。我らは誇り高きオルダミアン。例え負け戦であろうとも、祖国の為に立ち向かうのみだ」
ダグトレは最早ヤケクソであった。
元からイワノフにこき使われる犬であり、悪い事は全てダグトレのせいにされていたのだから。
どうせ負ければ自分は処刑される。
だからこそ、逆らって名誉の戦死を遂げたかった。
『貴様達の言う同志は、皆無駄死にだったのだ』
「黙れ、だからこそ私は。この主力艦を以て貴様らに鉄槌を下す!」
ダグトレが乗る艦は、主力艦ハルドブレウ。
そしてその左右に、大型艦載機母艦ナグストレイカが二隻。
その周囲にオルダモン親衛艦隊が控えていた。
どれも主席に与えられるものである。
『おっと、良いのか? 我々に攻撃すれば、Ve‘zが...』
「奴らは来んよ、何故だかわかるかね?」
余裕の態度を崩さないキロマイアの司令だが、それに対してダグトレは不敵な笑みを浮かべる。
『...何だと?』
「奴らは先にやるべきことがある故に、私たちを後回しにすると仰ったのだよ、ハハハハハ、私たちはまるで、豪華なプレートの付け合わせのミックスベジタブルというわけだ」
その笑いは渇き切っていた。
自分たちはついでだと嘲笑されたようなものだ。
だが。
「だからこそ、死ぬには良い日だ!」
攻撃開始。
そう受け取ったオルダモン艦隊は、総攻撃を開始する。
艦載機が次々と出撃し、レーザーの砲撃がキロマイアの艦隊に襲い掛かる。
「ミートラ参謀、指揮は貴様に任せる!」
「はっ、受領致しました...艦載機編隊、1番から4番は中央に展開!5、6番は左翼を、7、8番は右翼を抑えよ! 高速艦隊、中央に展開する艦載機編隊を援護せよ、そのまま中央で散開し、各個攻撃しながら敵艦隊後部に離脱!」
オルダモン艦隊はその利点を活かしながら敵に肉薄し、撹乱する。
キロマイアはVe‘zに協力をしてもらっていただけに、この戦法に対する対策ができておらず、戦闘開始から10分で数隻を失っていた。
「攻撃を集中させるのだ! 高速艦隊と言えど、全ての攻撃をかわし切ることは出来ん!」
「同志たちよ、攻撃を一点に集中させよ! 一つ一つの矢が弱くとも、束ねればサジタランの矢となり得る!」
キロマイア司令と、ミートラ参謀の司令が交差する。
両艦隊は、お互いに高速艦隊の一隻を、キロマイア艦隊の一隻を狙って射撃する。
「シールドに被弾! シールド消耗率が11%に増加!」
「くっ.....艦載機編隊はハルドブレウを抑えよ!」
そして。
ハルドブレウとナグストレイカの二隻が放つ砲撃が、キロマイア艦隊旗艦であるスティレアルに直撃し、そのシールドにダメージを与えていた。
そう。
ナグストレイカは武装母艦なのだ。
「ダグトレ主席! シールドが消滅します!」
「問題はない。敵のシールドももうすぐ消滅するのだろう? 全速前進! 機関オーバーロード!」
「.....ははっ!」
『主席、我らも......』
「責を取るべきは私一人で充分! 同志たちよ、後は任せた!」
そして、戦いの末に。
攻撃を受け、シールドが剥がれ始めたハルドブレウは加速する。
「ハルドブレウが突っ込んできます!」
「全艦攻撃集中! 止めろ!」
ハルドブレウのシールドに攻撃が集中し、破断する。
だが、速度と硬さを売りにするオルダモン連邦の艦船の頂点である『切り抜ける者』は、生半可な攻撃を全て装甲で受け止めた。
「私の我儘に付き合わせて悪かった」
「いいえ、貴方様の気持ちはよくわかります。元より我々も、あの欲深く愚かな主席の下につくことを辟易していた者たちばかり。もしヴァルヘイムに旅立つのであれば、共に。」
「機関オーバーロード完了、圧力容器破断まで60秒!」
多くの艦を吹き飛ばし、押し退けながらハルドブレウが突撃する。
そして、ついにスティレアルへとラムアタックを仕掛け、シールドのなくなった船体に食い込んだ。
『蛮族め、白兵戦に持ち込もうなどと.....』
「偉大なる我が祖国オルダモン連邦に誓って、白兵戦などという愚策は取らん! これが主席の戦い方だ、とくと見るがいい!」
「「「「「「オルダモン連邦万歳!」」」」」」
直後。
ハルドブレウが内側から火を噴き出して破裂した。
推力バルブが閉じたことで、逃げ場を失った圧力が全方向に向けて作用し、その装甲をまるで手榴弾のように飛ばした。
爆発で解き放たれたエネルギーがシールドを吹き飛ばし、装甲とパーツがキロマイア艦隊を壊滅させた。
「........敬礼!」
「「「「「「敬礼!」」」」」」
残存したキロマイア艦隊は、一斉に引き上げていく。
それを、片方のナグストレイカに乗るカーダモア次期主席は見送ったのだった。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




