109-強者への恭順
『クロペル共和国側が密談を指定してきたのですか?』
その言葉を聞き、カサンドラは意外そうな顔をした。
何故そのような事をするのか理解できなかったからだ。
『見たかな、カサンドラ。これが我が主の計略だよ』
そしてそれを、ケルビスは称賛した。
訳の分からないといった様子のカサンドラに、ケルビスは説明を行う。
『私たちは自由に攻撃が出来ない、だがそれに、クロペル共和国側は気づいたんだよ。攻撃さえしなければ反撃されない。それはつまり、オルダモン連邦に警戒されないためには、味方を生贄に捧げなければならないんだ』
『つまり、オルダモン連邦を裏切るという事ですか?』
『そうだ。彼らはオルダモン連邦を裏切って、仲間を守る事にしたのだよ』
そして同時に、カサンドラもケルビスも気づいていた。
この密談には、クロペル側の今後も掛かっていると。
『しかし.......エリアス様がいらっしゃいませんね』
『私が旅行に行くように仕向けましたからね、その邪魔をするのもいかがなものです。私が交渉に応じましょう』
『.......まさか、このために.....?』
ケルビスはにやりと笑う。
『いえいえ、そのような事は。あまりに不敬でしょう?』
『.....私も同席しましょう』
カサンドラはケルビスの暴走を抑えるために、自分もその席に同席することを誓ったのだった。
「緊張するね」
「そのためのこの立地ですから」
その頃、モニカ.......ではなくティニアと、ジン....ではなくジアンは、モニターを前に正装をしていた。
Ve’zとの密談に、観光客の出払ったパター星系を指定し、オルダモン連邦とVe’zのどちらかに攻撃されても、被害が出ないように配慮したのだ。
「でも、もし攻撃されたら.....」
「きっとあの方たちですから、すぐに脱出されるでしょう」
ティニアは昼間に出会った二人の観光客の事を思い出していた。
「綺麗な人たちだったね」
「そうですね」
ジアンは特に恋愛感情を持つような人間ではないが、昼間に会ったエリアスという女性に対しては、一種の感嘆のようなものを覚えていた。
「なに? 恋しちゃった?」
「そのような事はありません。彫刻のような女性でしたが、私は常に中立ですので」
「そう、なんだ」
ティニアはそれだけ言うと、モニターを見た。
秘匿回線で連絡をしたいとメッセージを送っただけなのだが、本当に来るのか疑問だった。
だが。
「な、何!?」
『シ.....ラー.......2...b』
モニターがグリッチし、文字化けが発生する。
それら全てが収まった時。
二人は白い空間にいた。
「な....!?」
二人の前には相変わらずモニターがあるものの、画面には何も映ってはいない。
当たり前である、通信システムはマインドリンクのツールとして使われただけなのだから。
『貴方達が、クロペル共和国の首脳で間違いありませんか?』
そして、白い空間から出現した女性が、二人に問いかけた。
ジアンは彼女を見ると同時に、昼間に出会った女性を連想した。
「.......私は側近に過ぎません、こちらの御方がティニア・ルクシャ・クロンペリャ.....正統なるクロペル共和国の継承者です」
『それで』
その時、もう一人の男が現れた。
こちらも不自然なほどに整った顔、青白い肌、銀髪とVe’z人の特徴を持っていた。
『人間如きが、我々に何の用事かな』
「.......」
その威圧感に、ジアンは硬直する。
だが、ティニアは揺らがずに口を開く。
「同盟を結びたいのです」
『オルダモン連邦を裏切ると?』
「..............国民の命には、替えられません」
ティニアは複雑な内心を隠して、そう言ったのだった。
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